コロナウイルスへの工学的対抗策についての考察

Presented by 大阪公立大学 大阪国際感染症研究センター 准教授 秋吉 優史

2021年4月から本学の 21世紀科学研究センター に開設されている
「大阪国際感染症研究センター」スターティングメンバーとなりました。
(2022年の大学統合の際に諸事情で一時的に国際感染症研究センターと名称変更となっています)

Last update 2023/02/20




 

Index

  • 基礎知識  

  • 石けんによる手洗い  

  • 紫外線  

  • マスクリーン  

  • 光触媒  

  • 飛沫除去装置 ひかりクリーナー
    (別ページでまとめています)  

  • 加熱  

  • その他、参考資料  

  • メディアでの取り上げ  

  • 社会貢献  

  • 秋吉 優史 研究紹介
    (別ページへのリンクです)

     

    (2023/02/20)

    大分長い間更新していませんでしたが、COVID-19 を取り巻く状況は非常に大きく変化してきています。

    感染症法上の位置づけを2類相当としていたのを5類に引き下げや、マスク着用の自己判断、新型コロナという名称をコロナ2019とするなど、です(最後のは COVID-19 と言う呼称がずっと前から有るんですが)。
    5類化によって一般の診療機関でも患者引き受けが可能となりますが、 普通の病院にも COVID-19 の患者が一緒にいる、ということでもあり、 感染症対策が十分ではない施設などではこれから大変なのではないかと思います。

    さらに大きな動きがマスク着用を個人の判断とするという方針で、 これまでも強制力はありませんでしたが、推奨もしないと言うことで 「個人の主体的な選択を尊重し、着用は個人の判断に委ねることを基本」というと耳障りはよいのですが、 では 何を基準に判断したらよいのでしょうか?

    高齢者施設の訪問時や通勤ラッシュ時など、着用を推奨するシーンも例示されていますが、「何故」かが全く示されていません。 強制力を伴う行政上の施行であれば曖昧な点がないようどこかで線引きしてすっぱり分ける必要がありますが、今回は「個人の主体的な選択」が求められているわけで、その判断基準が示されないというのは非常に遺憾です。シーン毎の例示であれば、「個人の主体的な選択」などないわけですから。

    このサイトをご覧の方には理解頂けていると思いますが、マスクを着用するかしないかの判断には、
    飛沫とエアロゾルの性質の違いを明確に区別する
    ことが必要不可欠です。

    • 医学的には直径 5μm 以上の液滴を飛沫、それより小さい物をエアロゾルと呼んで区別している。
      (5μm を境に急に物理的な性質が変わるわけではないが、粒径が小さくなると空中に滞留する時間が徐々に長くなる)

    • 口腔から放出される液滴は、直径 2μm 程度のエアロゾルの成分と、直径 150μm 程度の飛沫の 2成分に大きく分けられ、ここまで大きさが異なると大きく性質は異なる。

    • 直径 2μm 程度のエアロゾルの落下速度は 10-4m/s と非常に遅く、長時間空気中に滞留する。このため、換気が悪いと徐々にエアロゾル濃度が高くなっていく。

    • 直径 150μm 程度の飛沫の落下速度は 0.3 m/s 程度(1秒で 30cm 落下する)で、すぐに落下してしまう。このため、2m 程度の射程距離しかもたず、距離を取れば安全となる(ソーシャルディスタンス)。

    • 直径 150μm 程度の飛沫と直径 2μm 程度のエアロゾルの体積の差は 42万倍もあり、確率的に含まれているウイルスの量が全く異なる。口腔から放出されるエアロゾルのほとんどはウイルスが含まれていない単なる体液で蒸発すると塩分などしか残らず問題は小さいが、飛沫が乾燥すると含まれていたウイルスが残り、エアロゾルとして浮遊するため空気感染の原因となる(飛沫核)。

    以上の基本的な知見から、マスク(及びパーティション)を使用する必要があるのは

    • 飛沫の射程距離内で会話を交わす場合

    • 直接飛沫が届かなくても、換気が悪く、飛沫が乾燥して残る飛沫核が長時間溜まり続けるような環境
    に限られるわけです。 そして、そのいずれの場合も、自分の身を守るためではなく周囲に飛沫を飛ばさないために着用が推奨されます。 にもかかわらず、着用の有無を「個人の主体的な選択」に委ねるというのは強い違和感を感じます。 あなたは良くてもこちらは困る、と言う状況が多発するでしょう。 その一例が高齢者施設などとして挙げられているわけですが、 今後はますます自分の身は自分で守る必要が出てきます。

    ちなみに私は 2023/1/10-2/12 の日程でアメリカのオークリッジ国立研究所(ORNL)に滞在していましたが、確かにマスクをしている人は非常に希でした。 私自身、比較的人が多く、すれ違う確率の高いモールやスーパー内以外ではマスクはしていませんでした。しかし皆さん気にしていないわけではなく、ひかりクリーナーをお土産として持っていくと非常に喜んでくれました。 このような自己防衛のためのデバイスがこれからますます必要とされるように思います。

    ひかりクリーナーを使用戴いている一例として、20歳からお世話になっている宮崎優子バーテンダーのお店、東京大森テンダリー様、本研究室の松浦法雄客員研究員から紹介頂いた京都の名刹六道珍皇寺(漫画・アニメ「鬼灯の冷徹」でなじみの深い閻魔様や地獄の絵や、閻魔王宮の役人とも言われる小野篁が祀られており、「冥土通いの井戸」も庭内にあるとか)を紹介致します。どちらも毎日沢山の方とのお話しをされています。少しでもそう言った方々のお役に立てればと思います。

     

    (2022/08/31)

  • 日本エアロゾル学会での発表を行いました
  • 2022/8/3-5 に慶応大日吉キャンパスで行われた 第39回エアロゾル科学・技術研究討論会 に対面での参加をし、口頭及びポスターでの飛沫除去の必要性を主張してきました。

    講演内容は以下の通りです。

  • 対面する人と人の間に設置する小型飛沫除去装置の開発
    秋吉 優史、綿野 哲 、松浦 法雄、落合 剛(口頭発表)
  • 脱パーティションに向けた工学的飛沫対策の提案
    松浦 法雄、秋吉 優史

    一番のポイントは、飛沫による感染リスクとエアロゾルによる感染リスクを明確に区別し、 それぞれに適した対策を取る必要があることを主張したという点です。
    これは、国立病院機構仙台医療センターの西村秀一ウイルスセンター長などが エアロゾル対策の重要性を強調するあまり、飛沫感染リスクを過小評価していることに対する反論でもあります。

    エアロゾルは極めて小さい粒子であるため、ウイルスの含有量は小さい (口腔からの放出量の1万分の一程度という見積が、本学の野村俊之先生からも出されています(*)) ため、換気のよい環境ではほとんどリスクとならないのですが、 換気の悪い環境では次第に空気中を漂うウイルスの量が増えて行きます。 放出量と換気速度、どの程度の数を吸入したら感染に至るのかという感染力によってリスクは変化しますが、 感染の原因となることは明らかであり、それを認めようとしなかった感染研などは非難されるべきです。 もっとも、極めて少数のウイルス吸入で感染、発症してしまう感染力の高いウイルスによるいわゆる 「空気感染」とはイメージが異なるような気がしますので、言葉の問題ということかもしれません。

    現状のパーティションやつり下げシートなどの問題点に関する意見については同意できる部分も多いため、 「飛沫対策が不要」なのではなく、 エアロゾル対策にも留意した飛沫対策が必要である ということではないでしょうか。 そしてそれを実現しているのが小型飛沫除去装置という概念であり、ひかりクリーナーであると考えています。

    エアロゾルの専門家の集団であるエアロゾル学会の発表会場においても、 飛沫とエアロゾルそれぞれの特性を分けて考えてそれぞれに適した対策を取る必要がある、 という意見については一切異論がなく、極めて建設的な意見を頂けました。 初めて参加する学会であったため緊張していましたが、一つ安心出来ました。

    (*)野村俊之, 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染経路に関する微粒子工学的検討, 日本接着学会誌, 57(2021)427-431.


     

  • (2022/02/14)

    【暫定報告】

  • ひかりクリーナーのエアロゾルに対する効果が確認されました
  • 370 L のグローブボックス内でバクテリオファージQβ を含んだ溶液をネブライザーで噴霧して、長時間漂うエアロゾルに含まれるウイルスの除去性能評価を行いました。

    現状は暫定報告を受けたところであり正式報告書待ちでどこで試験を行ったかなど公表できませんが、 結果を整理した内容を暫定的に公開致します

    図中の「ブランク」(紺色の点)は、噴霧した後にファンで攪拌しただけの場合で、 「ひかりクリーナー使用」(紫の点)はチャンバー内を消毒後改めて噴霧し直し、ひかりクリーナー標準型(無機材質高性能フィルター使用)を作動させながら10分ごとにサンプリングした場合の結果です。 縦軸は対数プロットになっており、ひかりクリーナーの使用によりブランクよりも早く、指数関数的に減少していることが分かります。

    ブランクではスタート時に 1.6×106 PFU(Plaque Forming Unit; 感染価の単位で、今回の場合大腸菌を塗ったシャーレにファージを捲いて感染させて菌が死に穴が空くプラークがいくつ作られるか、と言う量。)であったのが 20分で 1.1×106 PFU となり、30% 程度の減少となりましたが、 ひかりクリーナーを使用することによりスタート時に 7.2×105 PFU であったのが 10分後には3.3×105 PFU、20分後には 1.8×105 PFU と、10分でおよそ半分、20分で 1/4 に減少していきました。

    もちろんまだ各条件1点しかデータを取得しておらず、より細かくデータを取得する必要がありますし(測定費用が非常に高額であったため、点数を絞る必要がありました)、 光触媒により不活化したかどうかは光触媒を塗布していないフィルターも使用して比較を行う必要があります。 しかし、ひかりクリーナーを稼働させることにより、大きな飛沫だけで無く、(フィルターでキャッチすることは出来ない)長時間空気中に滞留しているエアロゾルに含まれるウイルスを減少させることが出来たというデータは、非常に大きな意味を持つ物だと思います。 既に、エアロゾルよりも小さいホルムアルデヒド分子やアセドアルデヒド分子をひかりクリーナーにより分解するデータはたくさん取得していますが、ウイルスはこれらの有機ガス分子より遙かに大きいため、フィルター表面に接触するごく短期間で不活化することが出来るかどうかは、実際に実験してみなければ分かりませんでした

    もちろん実環境は 370L のチャンバーよりもずっと体積が大きく、 気流の影響など様々な点を考慮する必要がありますが、 エアロゾルはガスなどと異なり気流が無ければ余り遠くまで拡散しない事が知られており (たばこの煙がしばらく同じ場所に留まっている様子を想像して頂ければと思います)、 人と人の間に設置するひかりクリーナーはそれほど大きな体積を対象としていません。 たとえば机の上の直径1mの半球の体積は 262 L 程度になります。


     
    ひかりクリーナーによるエアロゾルとして漂うウイルスの除去挙動 


    (2021/12/29)

  • ひかりクリーナー2022の提供を開始します
  • ようやくひかりクリーナー2022 50台分が完成しました。 既に26台提供済みなので、残り24台となります。(2023/2/20 追記 現在残り 2台のみとなっています。) 試用して頂いて感想をフィードバックした上で、量産、商品化に移ります。

    無機材質の高性能フィルターを使用しており、LED は 2020型同様の 8灯仕様で、 これまでで最高の分解性能になっています。 本体はアルミ材に高品質塗装、天板のメッシュも穴径の大きいメタルメッシュとなります。 側面がアルミ材となっているため、漏れ光も最小限に抑えられています。 アルミフレームとファン・LEDユニットはマグネットテープで脱着可能で、 フィルターを挟み込んでいるファンと可視光 LED ユニットとはネジ4本で止められており、 ドライバー一本で簡単に外してフィルター交換を行うことが出来ます。 電源は、スイッチ付の 12V AC アダプターを添付致します。 (モバイルではなく据え置き前提です)

    製品提供に関しては こちらのページ を御覧下さい。

       

    (2021/08/27 当初掲載 → 09/08 審査結果を追加 → 09/09 緊急声明のリンク追加 → 09/22 緊急声明の考え方修正 → 12/23 紙媒体での出版完了 → 12/24 電子版公開)

    日本エアロゾル学会誌 投稿論文が公開されました

    ひかりクリーナーによる、飛沫除去性能を評価した査読付学術論文が、 2021/2/26 に投稿して以降、2度も Major Revision との判断を受けつつも、 ブラッシュアップを重ね、2021/08/27 に、三度目の正直で「このまま掲載」となり受理され、 完成度の高い論文として公開を行うことが出来るようになりました。

    12/20に日本エアロゾル学会の学会誌、「エアロゾル研究」Vol.36 No.4 に掲載され、 紙媒体としては発行されて手元に届いています。 「呼吸器由来エアロゾルとウイルスへの感染」という特集号となったため、 オンライン版は J-STAGEにて公開後、即フリーアクセスとするようで、 若干手続きに時間を要していましたが、本日 12/24 にようやく公開となりました。

    エアロゾル研究Vol.36 No.4 呼吸器由来エアロゾルとウイルスへの感染特集号

    ◆◆「エアロゾル研究」Vol.36, No.4 主な目次◆◆
    ■特集
    「呼吸器由来エアロゾルとウイルスへの感染」

  • 新型コロナ感染症のエアロゾル感染とマスクの効果
  • 呼吸器由来の飛沫の水分蒸発過程
  • SARS-CoV-2 感染機序についての構造生物学的研究の現状
  • ウイルス感染対策としての換気の考え方
  • (技術論文)気中浮遊インフルエンザウイルスのセンシングに向けた湿式静電捕集サンプラの開発
    ■研究論文
  • 光触媒式小型空気清浄機による飛沫除去挙動の評価
    ■技術論文
  • ウエットデニューダーに対応した水溶性大気粒子状物質のオンライン捕集器

  • もちろんこの論文の結果をもって全てが分かったわけではなく、 ある条件で測定した結果こうなった、というもので、 今後さらに様々な条件での測定が必要であることが、 査読のコメントを行う課程で明らかになりました。 共著になって頂いた綿野先生は、本学工学研究科長のエアロゾルの専門家、 落合先生は KISTEC の光触媒研究の第一人者であり、 大変貴重なコメントを活かすことが出来ました。

    いずれにしろ、飛沫除去装置というこれまでになかった概念の装置について、 初めてのエビデンスが得られたことになります。 今後各方面への働きかけを行い、実際の感染症対策を行う手段の一つとして 広く周知を行っていきたいと思います。

    既に日本エアロゾル学会の公式サイトに於いて公開されていますが、 「エアロゾル研究」誌の編集委員会からの審査結果と共に、 著者最終稿を以下に公開致します(図のキャプションが日本語のままなので逆に読みやすいかと思います)。

  • 光触媒式小型空気清浄機による飛沫除去挙動の評価,
    秋吉 優史, 綿野 哲, 落合 剛, エアロゾル研究, 36 (2021) 263-272.

  • 「エアロゾル研究」編集委員会からの審査結果

    論文中で得られた飛沫除去装置の性能評価に関する成果をリーフレットにまとめました。

  • ひかりクリーナーリーフレット 2021/09/24 版

    エアロゾルの問題は 8/29 の産経新聞でも報道されている ように、 エアロゾル学会の有志により 「最新の知見に基づいたコロナ感染症対策を求める科学者の緊急声明」 として提言がなされています。

    エアロゾルによる空気感染「も」感染ルートの一つであることは WHO も2020年7月に認めており、 過去のクラスター発生事例から今更ながらという感じですが、間違いないと思います。

    しかしながら、粒径2μmのエアロゾルと150μmの飛沫では体積が42万倍も異なり、 大量のウイルスを含む飛沫が飛び交っていては、 いくら換気が良くても近距離では飛沫感染が起こりえることの周知が改めて重要であると考えております。

    2020年7月以前のWHOの声明や、屋外での飲食に伴うクラスター発生などを考えても、 上記の声明のうちエアロゾルによる空気感染が主要なルートというのには賛同できず、 マスクやソーシャルディスタンスなどの基本的な飛沫対策、 手洗い・アルコール消毒などの接触感染対策がきちんと行われている状況で、 「残るリスクとして懸念すべき物」、と言う考え方が妥当なのでは無いかと思います。

    エアロゾルが主要であれば、飛沫や接触感染対策はしなくても良い、 と言うように安易に楽な方に考える人々が一定数居ることはこれまでの市民の行動からも明らかで、 換気の良い屋外であれば密集して飲食しても構わない、というような 誤ったメッセージを送りかねない報道には注意喚起を行っていきます。


  • (2021/12/09)

    昨年度クラウドファンディングサイト「マクアケ」において商品化を行った 「フォトンクリーナー」ですが、株式会社西田技巧と私は2021年12月以降 一切の責任を負わず、関係がありませんので、ご理解のほどお願いいたします。


    (2021/10/13)

    The 8th Asian Particle Technology Symposium, APT2021 での口頭発表を行いました

    全くの異分野での英語での発表、しかも現地会場に赴いてオンラインとハイブリッドでの講演と、 かなり戸惑う部分がありましたが、なんとか無事発表を終えました。 会議全体の Chair が共著者となって頂いている綿野先生でしたので、 大変緊張しましたが・・・
    内容は飛沫除去装置の性能評価に関する物で、 概ねエアロゾル学会に投稿した論文の内容となります。

    講演資料はこちら

    質問は以下のような物でした。

    ・ホルムアルデヒド分解挙動で無機材質フィルターを500℃に加熱すると性能向上するのはなぜか
    A: そのままでは有機バインダーを分解するために生成した活性酸素が消費されてしまうが、加熱により有機バインダーが分解されるため。

    ・どの程度の期間光触媒は使用できるのか
    A: 光触媒自体は半永久的だが、部屋の状況によっては埃で目詰まりしてしまう。一般的な居室程度の環境であれば半年程度は使用できた。

    ・対象物によって分解に要する時間が異なるのでは(スピーカーからの英語が聞き取りづらく、多分この内容だったかと)
    A: 大きな飛沫に含まれる大量のウイルスの分解には時間を要するが、フィルターでキャッチしてしまえばゆっくり分解すれば良い。エアロゾルは素通りするが、より小さいホルムアルデヒドガスの分子も表面に触れただけで分解されるため、ある程度の効果が期待できる。

    発表したセッションの Invited lecture は Chang-Yu Wu 先生による Efficient collection of viable SARS-CoV-2 aerosol for studying its transmission と言う講演で、アメリカ CDC による具体的な対策の指標(換気回数など)や、換気状況の違いによる感染者の発生状況の違いなど大変興味深い物でした。自分の発表前で講演内容を頭にロードしている最中であったため、しっかり聞けなかったのが残念です。

    なお、10/3 には、IVF 学会という生殖医療に関する学会の学術集会 に於いて、「感染症に対する普遍的な工学的対抗策の検討」 と言う題目で招待講演させて頂きました。商品化について質問されましたが、利益相反など色々と差し障りがあるため、商品化に向けて準備を行っていると紹介するのにとどめておきました。


    (2021/08/26 当初掲載 → 2021/09/04 修正)

    照明学会/日本照明工業会からの「紫外線殺菌 ご利用上の注意」パンフレット

    2020年10月から日本照明工業会の「消毒殺菌用 UV放射小委員会」の傘下に「UV-C紫外放射製品の安全ガイド作成WG」を立ち上げていただき、東海大学の竹下先生、殺菌ランプに関連した様々なメーカーの方達と共に紫外線殺菌を行う上での注意点をまとめたパンフレットを作成致しました。最終的に照明学会にも確認いただき、照明工業会との連名で冊子を出す形となっています。

    今回のパンレットは不要な被ばく事故をなくすための安全上の注意点がメインで、 こうやって照射すると殺菌・不活化出来る、というガイドライン的位置づけのものではありませが、 厚労省 医療機関における院内感染対策について(H26) における、「紫外線照射等については、効果及び作業者の安全に関する科学的根拠 並びに想定される院内感染のリスクに応じて、慎重に判断すること」 への科学的根拠と捉えることが出来るかと思います。

    一般向けのわかりやすい表現について、まだまだ変えていかなければならない点が多々ありますが、今まで野放し状態だったところに一石を投じられればと思います。

  • 日本照明工業会のホームページ
    https://www.jlma.or.jp/

  • 「紫外線殺菌 ご利用上の注意」パンフレット
    https://www.jlma.or.jp/siryo/pdf/pamph/notice_UV-light-emitting.pdf


  • (2021/08/02)

    紫外線による SARS-CoV-2 の不活化については、様々な論文が出てきており、 横断的検証が始まっています(論文データをアップデートしています)。 我々のグループでも実験条件を厳密に見直すことで、信頼性の高いデータ取得に努めています。

  • SARS-CoV-2 Dose Response Research Update
    https://uvsolutionsmag.com/articles/2021/sars-cov-2-dose-response-research-update/
    様々な紫外線によるコロナウイルスの不活化論文について、実験上の問題点などを指摘しています。 照射照度の問題点について特によくまとめられており、非常に的確だと思います。 DeepL を使用して日本語訳したものをこちらにアップ しておきます。

  • UV Solutions (英語ですが、紫外線に関する膨大な情報が集められています) https://uvsolutionsmag.com/


  • (2021/06/24)

    6月23日付けで、シャープからも光触媒の新型コロナウイルスに対する実証試験のニュースリリースが出ました。

  • シャープ独自の可視光応答型光触媒材料が新型コロナウイルスの ウイルス感染価を2時間で99.99%以上減少させることを実証
    https://corporate.jp.sharp/news/210623-a.html

    また、記事中で「太陽光だけでなく蛍光灯やLEDなど屋内照明の可視光にも応答する酸化タングステンを主成分に助触媒として白金(プラチナ)を配合することで高い酸化力を実現」と言う部分も見逃せません。 シャープからも可視光応答の光触媒スプレー MX-AZ03JK が販売されており、 今回試験した物と同一とは謳われていませんが、 (製品の宣伝で薬効を謳うことが薬機法で規制されているためと思われます) 試験結果全体を掲示することは妨げられていないと思われますので(*)、 今後の情報に期待しましょう。

    東芝ルネキャットとの比較ですが、先日のニュースリリースによると、 ルネキャットは 4g/m2 塗布、3000 lux 照射 6時間で 99.2% 以上不活化に対して、 シャープ製の光触媒は塗布量が不明ですが、1000 lux 1時間照射で 98% 以上、2時間で 99.99% 不活化となっており、高い性能を示しています。どちらも、JIS-R1756 「ファインセラミックス−可視光応答形光触媒材料の抗ウイルス性試験方法−バクテリオファージQβを用いる方法」に準拠した試験法のように見受けられます。

    もちろん、これらの試験は実験室レベルの物であり、 一定の環境で光触媒が新型コロナウイルスを不活化できることを示したに過ぎません。 実際の環境で利用して、「感染制御」にどの程度効果があるかは、未知数です。 今後の研究が期待されます。

    (*) 製品評価技術基盤機構 NITE では、光触媒製品に対する国際基準に基づく認定を受けた 試験機関の紹介を始めており(1)、その報告書の取り扱いについて、「薬機法に抵触しない範囲で、報告書の全ページをウェブサイトに掲載することは問題ありません」としています(2)。

  • (1) 光触媒抗ウイルス加工製品の新型コロナウイルスを用いた評価による試験機関の紹介について
    https://www.nite.go.jp/nbrc/information/osiraseverificationbody.html
  • (2) 報告書の利用に当たっての留意事項について
    https://www.nite.go.jp/data/000120691.pdf


  • (2021/06/17)

    昨年2月28日に、「新型コロナウイルス向けの抗ウイルス性試験を外部へ委託」と ニュースリリースが出ていた東芝の可視光応答光触媒「ルネキャット」ですが、 ようやく論文がパブリッシュされ、それに併せてニュースリリースされたようです。

  • 光触媒「ルネキャット」の新型コロナウイルスに対する感染力抑制の効果について
    https://toshiba.semicon-storage.com/jp/company/news/news-topics/2021/06/corporate-20210617-1.html

  • Masashi Uema, Kenzo Yonemitsu, Yoshika Momose, Yoshikazu Ishii, Kazuhiro Tateda, Takao Inoue, Hiroshi Asakura, "Effect of Photocatalyst under Visible Light Irradiation in SARS-CoV-2 Stability on an Abiotic Surface", Biocontrol Science, 26 (2021) 119-125.
    https://www.jstage.jst.go.jp/article/bio/26/2/26_119/_article/-char/ja/

    ただ単に SARS-CoV-2 ウイルスが不活化されました、だけではなく、 スパイクタンパクが減少している TEM 写真なども載っており、 メカニズムにまで突っ込んだ論文で、ここまで時間がかかったようです。 もちろん、しっかりと不活化させる効果が確認されています。

    光触媒が特定のウイルスに対して効果が無いことは考えられませんので、当然の結果ではありますが、 COVID-19 に対する工学的対策を考える上で、一つの大きな節目になるかと思います。

    カルテック社のグループも、405nm LED 光励起の酸化チタン光触媒での SARS-CoV-2 不活化の報告ですが、 エアロゾルとして噴霧した物に対しても検証しています。 こちらも、不活化しただけではなく、RNA やタンパクへの損傷について検討を行っています。

  • 光触媒で空気中に浮遊する”新型コロナウイルス”の感染性を検出限界以下まで消失させることに成功
    https://www.kaltec.co.jp/news/?p=10376
  • Ryosuke Matsuura, Chieh-Wen Lo, Satoshi Wada, Junichi Somei, Heihachiro Ochiai, Takeharu Murakami, Norihito Saito, Takayo Ogawa, Atsushi Shinjo, Yoshimi Benno, Masaru Nakagawa, Masami Takei and Yoko Aida, "SARS-CoV-2 Disinfection of Air and Surface Contamination by TiO2 Photocatalyst-Mediated Damage to Viral Morphology, RNA, and Protein", Viruses, 13 (2021) 942_1-14. https://www.mdpi.com/1999-4915/13/5/942

    ただし、実験室レベルで不活化させるミクロな効果が確認されることと、 実際の社会全体の中で感染症を抑制するマクロな効果があることとは、また別の話です。 飛沫、エアロゾル、接触感染のどれに効くように使用するのか、 光の当て方、どこに使用するのか・・・など、考えなくてはならないファクターが無数にあるためです。 使える武器があっても、使い方が悪ければ宝の持ち腐れとなってしまうのです。 紫外線も、確実に効果はあるわけですが、きちんと目的の場所に光が当たっていなければ効果が無いのと同じです。

    大阪国際感染症研究センターにおいて我々のグループは、 このマクロな感染制御についての検証を始めようとしています。 具体的には、小型飛沫除去装置「ひかりクリーナー」を病院や学校の教室など、 部屋としての規格が揃っている環境で使用していただき、 使用していない一般の対照群との間で統計的に有意な感染者数の差が検出できるか、 というものです。

    もちろんこれには様々な倫理上の問題があるため慎重に手続きを進める必要があり、 感染者情報の取得や提供先の仲介など行政との密接な連携が必要となってきます。 また、ひかりクリーナーの真価は人と人の間に設置して飛沫を除去することにあり、 設置場所に注意を払う必要があります。 また、統計的な処理が必要となりますが、私は余り統計が得意ではありません。
    行政との連携は、これまで大阪府やコロナ対策室などとの連携を行ってきた実績がありますし、 そもそも大阪国際感染症研究センターは行政への貢献を強く求められておりますので、 なんとか進められるかと思いますし、設置場所に関しては現場との丁寧なコミュニケーションで 最適解を見つけていきたいと考えています。 統計に関しては・・・医学的な統計処理に詳しい方の研究参加を心からお待ちしております

    そして、相当多数(数千台レベル)のサンプルが必要であることが予想できるため、 ある程度(数百万円程度)の予算が必要です。 しかしながら昨年度と異なり本年度は全てのプロジェクトが終了し、 ほとんど予算が無い状態です。 現在そこそこの額の公募研究に申請予定ですが狭き門ですので、 なんとか自前でまかなうことを検討しています。

    昨年度は大変慌ただしい状態であったため、大阪府大のふるさと納税の仕組みを活用したつばさ基金の 「放射線研究振興プロジェクト」の枠組みを使用して寄付を受けつけており、集まった資金は放射線教育振興のために 使用せざるを得ませんでした。このため、学校教育現場での生徒の被曝を避けるためのプロジェクトに於いて、全国の学校の装置の放射線量を測定するための放射線測定装置を導入させて頂きました。

    本年度の寄付受け入れについては、6/30 付けの記事をご覧ください。 (2021/06/30追記)


  • (2021/03/03)

    既にメディアでも報道されていますが、

    UV-C を用いた消毒器による健康被害実例が出てしまいました。

    飲食店で殺菌灯を用いた消毒器が、直接人体に照射される場所に設置され、 人体に有害であることを知らなかった被害者は長時間素肌に露光し、 翌日以降、眼と皮膚に非常に強い炎症が生じています。 おそらくこれまで報告例の有った中で最も高い積算照度の被ばく事故事例となります。
    被害者は有名なモデルの方という事で、大変な被害を受けており、 関係者を通じて可能な限りの協力をさせて頂いております。 (個人情報保護の観点から、詳細についてはご容赦願います)

    UV-C による皮膚影響は非常に情報が少なく、私が見つけたのは

  • 紫外線C発生装置(クリーンライザーR)による皮膚障害事故
    ―UVCによる角層障害についての検討を含めて―
    https://www.jstage.jst.go.jp/article/dermatol/114/12/114_1911/_article/-char/ja/

    だけで、しかも大阪府大からは購読できません・・・ この論文のアブストラクトを見る限りは今回の件と推移は非常に良く似ているようです。 (皮膚表面がぽろぽろと剥がれ落ちる)

    基本的に皮膚の浅い領域で吸収されてしまうので、 紫外線発がんに関する論文 によると (p40 右カラム 動物実験の章) UV-B の方が腫瘍の発生に影響が大きいようです。
    しかし、日本紫外線水処理技術協会によると 「皮膚ガンの発生リスクは UV-A < UV-B < UV-Cと高くなっており、 UV-C は他の波長と比べ、格段にそのリスクが高いとされています。」 とのことで、マウスの実験で確かめられているようですが、 見解が統一されていないようです。
    紫外線の殺菌効果解説シリーズ(3)「紫外線の人体への影響は?」 によると、眼に対する影響として角膜で吸収されてしまうため、 白内障の心配は無いとしていますが、角膜へのダメージが大きく、 重症化すると視力低下やひどいときには失明してしまうこともある、 とのことですが、不幸中の幸いとして、今回の事故ではそこまでは至らなかったようです。
    254nm の殺菌灯からの紫外線は非常に透過率が低く、ほとんどが皮膚表面で吸収されてしまうのですが、 一部は 20μm 程度の角質層よりも深い 60μm 程度まで侵入し、炎症を起こします。 222nm だと数μm程度までしか侵入しないため、角質層で完全に止まるのと大きく異なるわけです。

    絶対に、UV-C 紫外線を皮膚や眼に照射しないで下さい!

    わずかな反射光、漏れ光でも後になってから痛みが出てきます。 殺菌灯の使用は、密閉した箱の中での使用か、十分な距離を取るか、 フェイスガード+防護メガネ+手袋といった完全防護の状態での使用に限られます。

     


    ウシオ電機のサイトより

     

    我々は本件を非常に重く捉えており、照明工業会/照明学会や、NITE、 内閣官房コロナ対策室などと情報交換を行って可能な対策を検討しています。
    既に、 経済産業省消費経済審議会 製品安全部会 において本件取り上げられており、 「資料6-2 規制の見直し事項A電気消毒器の規制のあり方について」 で殺菌灯を用いた電気消毒器に関する規制強化が検討されています。 (電気用品安全法の規制対象として明確化されます)

    また、それと並行した動きとして「UV-C紫外放射製品の安全ガイド」の策定のための WG が 日本照明工業会に於いて設立され、その委員として貢献することになりました。 クルックス管からの低エネルギーX線の安全管理体制構築などの経験が十二分に活かせる物と思います。

    なお、 JIS Z8812 (1987) 「有害紫外放射の測定方法 」 では、 254nm の UV-C に対する許容限界値基準(Threshold Limit Values, TLV)は一日あたり 6mJ/cm2 となっています。 しかしながら現状ではそれが法令による規制に組み込まれていません。 そして危険な製品が野放しになっています。 そのあたりが非常に クルックス管に対する安全管理と似ているわけです。


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    (2021/12/9 update)


     


     


     


     


     


     

    クリックすると より詳細な内容をまとめたPDFファイル にリンクします
    (2021/12/09 大幅 update)

     

    (2020/06/2 更新)

    日本医療研究開発機構 (AMED) ウイルス等感染症対策技術開発事業(実証・改良研究支援) 「既に開発・上市されている機器等(空気清浄機、UV殺菌装置、素材等)によるウイルス等感染症対策への有効性の確認を行う研究支援」において、このサイトで提案している内容をベースとした 「感染症指定医療機関に於けるUV-C殺菌灯及び可視光応答光触媒を用いた感染リスク低減に関する研究開発」が採択されました。
    https://www.amed.go.jp/koubo/02/01/0201C_00094.html

    評価委員会からの指摘事項として、

  • 誰でも思いつくことで独創性が高いとは思えない。
  • これまでに何故本提案のような研究が世界的に実施されなかったのかについても気に掛かる。

    というのが、非常に実態を突いているかと思います。 素人の発想を何故か誰もやっていないということです。


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    基礎知識

    まず、ウイルスにも色々と種類があり、今回のコロナウイルスは、一本鎖+RNAウイルス と呼ばれるタイプで、脂質のエンベロープにつつまれているタイプの物です。
    エンベロープにつつまれたタイプのウイルスは脂溶性の膜をアルコール、石鹸、胃酸などで溶かして変質させることが出来るので、消毒薬抵抗性が低いと言えます。 このため、今回のコロナウイルスにはアルコール消毒などが有効だと言えます。
    それに対してノロウイルスなどはエンベロープを持たず、タンパク質のカプシドという殻につつまれ ている単純な構造で、アルコール、石鹸、酸、塩素、熱などに抵抗性を持ちます。

    コロナウイルスに対しては手指のウイルス不活化であれば、石鹸での手洗いで十分効果を発揮します。 出先では除菌用ウエットティッシュなど、適材適所が肝要かと。 塩素消毒も当然有効です。

  • ひと目で分かるウイルスと病気 - ウイルスを知る
    https://medical-tribune.co.jp/mtpronews/se1412/se_1412_p2-4.pdf
  • ウイルスの種類
    http://www.virusblock.jp/tech/c-004.pdf
  • コロナウイルスはなぜ石けんや洗剤で殺されるのか-高校化学のレベルで解説
    http://konamih.sakura.ne.jp/blog/2020/03/08/

    新型コロナウイルスは感染の際『ACE2』という受容体と接触する必要があり、 体外に接するところでは口腔や鼻腔、目の結膜に存在するため、 明らかな外傷による皮膚の破損がなければ、手などについても直接感染はしません。 手に付いたウイルスを、口などの粘膜に持っていくことを防ぐのが重要な対策な訳です。 花粉症だと目とかもこすってしまったりしますしね。

  • 「ACE2受容体」の働きを知って新型コロナウイルス肺炎(COVID-19)の重症化を防ぐ
    https://note.com/sato_agg/n/nf53d50a9a960

  • コロナウイルスの細胞侵入機構
    田口文広, 松山州徳, ウイルス, 59 (2009) 215-222.
    http://jsv.umin.jp/journal/v59-2pdf/virus59-2_215-222.pdf

    風邪の予防で手指の消毒の他に重要なのがうがいです。
    が、インフルエンザウイルスやコロナウイルスは粘膜に付着してから15〜20分で感染する と言われており、自宅に帰ってからうがいをしても間に合いません。 エンベロープウイルスは胃酸に対して抵抗性が無いため、 小まめに水を飲んで飲み込んでしまった方が効果は高いようです。
    コロナウイルスは正しく知れば「防御」できる
    https://toyokeizai.net/articles/-/327779?page=2

    敵を知れば、自ずと対策も見えてきます。 これらの対策を行っても、絶対に感染しないという事は保証出来ませんが、 一人一人が可能な限り感染のリスクを減らしていくことが重要です。 時間をかせげれば、ワクチンの接種が進み、治療法が開発されるでしょう。 とにかくそれまで持ちこたえましょう。

    (2021/08/30)

    2019年の「みんなのくらしと放射線展」 のテーマとして、放射線による DNA 損傷と、その修復など、がんを防ぐ体の働きを まとめていました

    そのなかで、免疫細胞の働きについて「はたらく細胞」のキャラクターを使ってまとめた資料があり、 現在のウイルスに対抗する体の仕組み、とくに、ワクチンによる「獲得免疫」 の理解の助けになると思いますので、改めてここに掲載致します。

    (学校の授業、身体の中のことを教える機会、医療施設での各種説明、及びそれらに類似する場などで、「はたらく細胞」で擬人化された細胞たちや細菌等の画像の一部を無償で利用することが出来ます。)


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    石けんによる手洗いの有効性

  • 手洗いの注意点は? 石けん、十分泡立てて「除菌」
    https://mainichi.jp/articles/20200303/k00/00m/040/325000c
    の中で、「せっけんを使うのは、泡立てて菌やウイルスを物理的に浮かせて洗い流すためです。」 とありますが、コロナウイルスはエンベロープウイルスであり、 石けんで脂質の膜を変性させることで不活化できる、と言う考えは間違っているかを、 記事中でコメントをしていた東邦大学 看護学部感染制御学研究室 小林寅(吉が二つ)教授に 確認してみました。返答は 「紙面の文字数に限りがあることから作用機序の詳細については記者と相談して割愛しました」 とのことで、逆に石けん手洗いが定量的にどの程度効果的かのエビデンスを聞かれたため、 調べてみました。

  • 消毒剤を含有する市販ハンドソープ及びうがい剤製品の殺菌ウイルス不活化作用
    富田 勉、菊池 賢、感染症誌、92 (2018) 670-677.
    http://journal.kansensho.or.jp/Disp?pdf=0920050670.pdf

    Table 5 には、インフルエンザウイルスとノロウイルスの比較があります。 若干インフルエンザウイルスの方が不活化の効果が高い、と言う程度ですが・・・

  • Norovirus の代替指標として Feline Calicivirus を用いた手洗いによるウイルス除去効果の検討
    森功次 他、感染症誌、80 (2006) 496-500.
    http://journal.kansensho.or.jp/Disp?pdf=0800050496.pdf

    と言う論文は、

  • ウイルス感染予防に効果的な手洗い方法とは
    https://medical.jiji.com/topics/1545

  • 【インフルエンザ対策】1分間の手洗いでウイルスが「10万分の1」に
    https://weathernews.jp/s/topics/201901/210135/

    でエビデンスとして挙げられています。 (上のサイトの引用は論文名が違っていますが・・・)

  • 流水ですすぎ洗いを15秒しただけの場合でも、ウイルスの感染価、遺伝子量ともに、 手洗いをしない場合の約100分の1(約1%)に減少
  • せっけんを使い、もみ洗いを10秒間した後、流水で15秒間すすぐと、 ウイルスはわずか0.01%程度に減少

    なのですが、これはノロウイルス(の代換のウイルス)に対する物で、 エンベロープの変質とは関係無く効果があるようです。
    結局、小林先生仰るように物理的に洗い流す効果が主で、 エンベロープ付きウイルスの場合脂質膜を変性させて不活化させることも期待できる、 と言う程度なのかもしれません。 いずれにしても、石けんによる手洗いは十分効果があると言えます。

    (2020/05/11 追加)
    一般の方からの情報提供です。 界面活性剤として代表的な化合物毎の効果について検証しているという内容です。

  • 国立感染症研究所
    ドアノブ等の室内消毒には、エタノールと並んで台所用合成洗剤も 効果的に使えることが実験的に確認された
    http://idsc.nih.go.jp/disease/sars/sars03w/index.html

  • 北里研究所 / 北里大学
    手洗や洗濯用の洗剤等によるコロナウイルス不活化効果に関する実験的評価結果
    医薬部外品および雑貨の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)不活化効果について

  • 独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)
    新型コロナウイルスに対する消毒方法の有効性評価について、第2回検討委員会を開催しました
    https://www.nite.go.jp/information/osirase20200501.html

    (2021/08/02)

    長いこと界面活性剤について放置していました。
    今となっては石けんでの手洗いがSARS-CoV-2 の不活化に有効であることは常識となっていますが、
    我が国では製品評価技術基盤機構(NITE) がお墨付きを与える形となっています。

  • ご家庭にある洗剤を使って身近な物の消毒をしましょう
    https://www.nite.go.jp/data/000111300.pdf

  • 新型コロナウイルスに有効な界面活性剤が含まれている製品リスト
    https://www.nite.go.jp/information/osirasedetergentlist.html

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    紫外線

    紫外線は可視光線よりも波長の短い(=エネルギーの高い)光の一種で、 波長の長いものから順に UV-A, UV-B, UV-C とランク分けされています。
    UV-A は 320〜400nm 程度の波長で、比較的透過力が高く皮膚の奥(真皮)まで到達して、 皮膚のたるみなどの原因になると言われています。
    UV-B は、290-320nm 程度の波長で、日焼けや皮膚癌の主な原因(UV-A の600-1000倍の強さ)となります。ただし、太陽光中の紫外線には 5% 程度しか含まれていません。
    UV-C は、200-290nm 程度の波長で、非常に強い殺菌力を持ち人体にも有害ですが、 オゾン層で吸収されて地表には届きません。
    さらに波長が短い紫外線は真空紫外域と呼ばれ、大気中では吸収が激しいため伝わりません。
    もっと波長の短い光は、X線やガンマ線という、電離放射線という事になります。 逆に可視光より波長が長いのが赤外線、さらに様々な電波、と言う形になります。

  • 皮膚科 Q&A
    https://www.dermatol.or.jp/qa/qa2/q03.html

    紫外線による殺菌効果のピークは 260nm 程度で、 310nm 程度になるとほとんど効果が無くなります。 それに対してネイルなどで使われる UVレジンを固めるための UV-LED は 375nm 単波長、 蛍光管タイプでも 315-400nm 程度で、ウイルスの不活化には使えません。 太陽光も地表では 300nm 位でほとんど強度がなくなっています(UV-A の波長域の強度に対して UV-B の波長域の強度は、5%程度です)。

    最も効果の高い 254nm の UV-C が出せる滅菌灯(低圧水銀ランプ)や、UV-C LED が、 アマゾン、モノタロウなどで安価に購入可能ですが、くれぐれも取扱いに注意して下さい。 LED 式のハンディの物が売られていますが、私は怖くて使う気にはなりません。 最低でもサングラスは必須です。(後述するように、この手の商品はほとんど効果が無いことが確認されています)

  • 岩崎電気 紫外線殺菌
    (DNAの吸収特性、殺菌作用の分光特性、各種の微生物を死滅させるために必要な紫外線照射量など非常に参考になります)
    https://www.iwasaki.co.jp/optics/chishiki/uv/02.html

     
         DNA の紫外線吸収特性          殺菌作用の分光特性

    上記の岩崎電気のサイトより。
    右の殺菌作用のグラフはあくまでも「菌」に対してであり、 大きさが全く異なるウイルスに対しての効果とは異なります。 菌の場合はその周りの細胞質などによって紫外線がある程度吸収されてしまいますが、 ウイルスの場合はその効果が小さく、DNA の吸収特性に近いと考えられますが、 直接的な遺伝子損傷だけで無く活性酸素の生成という間接作用も考えられますので、 単純に同じではありません。

  • ブラックライトの波長・安全性・原理について
    http://trick-poster.com/?mode=f16

  • 太陽光のスペクトル
    http://denkou.cdx.jp/Opt/PVC01/PVCF1_4.html

  • インフルエンザウイルスに対する紫外線影響 徳島大学 高橋教授
    https://www.tokushima-u.ac.jp/docs/2018121200023/
    によると、UV-A でもウイルスに対しては限定的ながら効果があり、 UV-Bは100倍の効果、 UV-C はさらにその5倍というデータが出ています。

     

     

    以下、囲みの中はやや難しい研究者向け情報です。一般の方はスキップして下さい。

    突然変異に関する遺伝子的な考察から、対策としてはアルコールなどの他に、 紫外線が有効で有ると考えられます。 紫外線も放射線と同様に、遺伝子に損傷を与え、一本鎖RNAのコロナウイルスは修復が困難であるため抵抗性が低いと予想されました。 実際にインフルエンザウイルスなどに対して紫外線照射は有効で、従来から要るコロナウイルスに対しても有効性が確認されています。 ただし、一本鎖RNAウイルスであるから特に抵抗性が低い、と言う訳では無いようです。

  • 紫外線消毒による病原ウイルスの不活化効果 お茶の水女子大リポジトリ

    紫外線の光子による励起はエネルギーが小さいので、 ガンマ線のように核酸の主鎖の切断を起こしません。 一般の細菌などに対してはチミン二量体(ピリミジンダイマー)の生成が 紫外線による損傷の主たる物です。 RNA はチミンを使用していませんが、チミンだけでなくシトシンやウラシルも二量体を作り、 一般にこれらをピリミジン二量体と呼ぶそうです。

  • ATOMICA 放射線のDNAへの影響
    https://atomica.jaea.go.jp/data/detail/dat_detail_09-02-02-06.html


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    高橋先生のインフルエンザウイルスに対する紫外線影響のデータから、

    太陽光線によるウイルスの不活化にどれぐらい時間がかかるか

    計算してみました。

    まず UV-A について検討します。

    UV-A では 1/100 に減らすのに 50J/cm2が必要です。 こちらのデータによると、周囲に遮蔽物の無い海岸の高さ1.5m位置での、紫外線強度が一番強い場合でおおよそ 2.5mW/cm2 ですので、理想的な場合で2万秒ほど必要です。 住宅地では最大で 8月 1.5mW/cm2、12月 0.7mW/cm2 ですから、 ざっくりと5万秒、一日が86,400秒で、上の紫外線強度は正午の値ですから、 一般的には2日以上必要、と言う事になります。

    資生堂のサイトの情報によると、一日あたり、と言う値で紫外線量が出ています。日照時間内の時間変動を足し合わせてあるわけです。
    このデータでは、7-8月のピーク期には、UV-A は 800kJ/m2/day となっています。 上述の情報では昼のピーク時で 2.5mW/cm2 = 25J/s/m2 ですから、 8.9時間分、やや大きすぎる気はしますが、オーダーでは合っています。 こちらのデータを基にすると、800kJ/m2 = 80J/cm2 ですから、 UV-A では 50/80 = 0.625dayで 1/100 に落とせることになります。 このdayとは、一日分の日照時間全体のことを指しますから、 こちらの紫外線量の時間変動に関するデータを用いると、 夏場の昼間なら半日程度で OK、と言う事になります。 12月は 350kJ/m2/day となり半分弱 になるのは、上記のデータと同じで、 50/35 = 1.43 day 必要です。

    次に、UV-B も考慮に入れます。

    上でも使用した 資生堂のサイトの情報 によると、7-8月では、25kJ/m2/day となっています。 徳島大学のデータを解析すると、UV-B では 1/100 に減らすのに、0.45J/cm2 が必要です。
    25kJ/m2/day = 2.5J/cm2/day ですから、0.45/2.5 = 0.18day 必要です。 残念ながらピーク時の時間あたりの紫外線量のデータが無いため、 上で使用した UV-A のデータと比例するとして、 UV-A の場合で 0.18day は何時間ぐらいに相当するかを計算してみます。
    800kJ/m2/day x 0.18day = 144kJ/m2で、 ピーク時は 2.5mW/cm2 = 90kJ/m2/h ですから、 144/90 = 1.6h 程度で、1/100 まで落とせることになります。

    季節による変動はと言うと、UV-A は冬場でもピーク時の半分弱程度の強度ですが(800kJ/m2/day → 300kJ/m2/day)、UV-B は大気によって吸収されやすいため 25kJ/m2/day → 5kJ/m2/day と1/5 になってしまいます。このため上記の時間も5倍かかることになり、 0.9dayと、ほぼ丸一日必要、と言う事になります。

    上記の結果から、マスクについてもこの程度の時間太陽光に当てることで、 不活化することが出来る、と言うことが出来ます。 (あくまでも、高橋先生のデータを元にした考察です。 今後より多くのデータで検証してみます) もちろん、晴天で、日当たりの良い場所である必要がありますが。 後述の光触媒や加熱法と組み合わせることで、信頼性はより向上するでしょう。

    なお、細菌の滅菌やウイルスの不活化などは、全て対数的に変化します。 ピーク時 1/100 に減らすのに必要な 1.6h の半分の 0.8h では 1/50 に減るかと言うとそうでは無く、1/10 になります。 逆に 3.2h では 1/10000 になるわけです。 半分に減らす時間は、1/10 に減らす時間に -log10(1/2) = 0.3 をかけて、 0.24h = 14.4min となります。このあたりは、放射能の半減期などの考え方にとても良く似ています。

     

    (2021/08/26 改訂)

    ここで、2020/04/27 の夕方にフジテレビの Live News It! と言う番組でしゃべった内容についてです。
    2020/4/24 のニュースで報道されている、 「物の表面に付着した新型コロナの場合、気温22度、湿度が80%で夏の紫外線を受ける場合はウイルスは2分間で半減する」 https://www.afpbb.com/articles/-/3280112?act=all と言う報道に関する話で、上記の太陽光中の UV-B で計算した 14分という結果と 7倍の開きがあります。
    テレビでは水の中で紫外線が吸収されるためと説明していて、テロップまで出ていましたが、 その後260nmでの水中での吸光度などを確認したところ、間違いでした。 水質浄化や水素発生のために水中の光触媒に紫外線を当てていた訳ですから、 数mm程度の水ではほとんど吸収されないことに気が付くべきでした。 (一時間ぐらい喋った中で、使って頂いたのがピンポイントで 間違っていたところという・・・)
    ただ、水溶液中と、無孔質の物体表面とでは大きく条件が違い、 たくさんのウイルスが含まれている溶液中ではウイルス自身が影を作る、自己遮蔽という効果が考えられます。 またそもそも実験で用いた UV-B LED 310 nm の単色光と、太陽光に含まれる紫外線はスペクトルが異なるため、 対数の世界の話ですから、この程度の差は簡単に出てしまうと思います。 どういった条件での実験か知りたいところですが、 残念ながら国立生物兵器分析対策センター(NBACC)の元になるデータ(論文)というのは開示されていません。 そもそも、こちらで計算に使ったのは新型コロナウイルスに対するデータではなくインフルエンザウイルスに対するもので、大体倍程度の耐性の差があるようです。 いずれにしろ、想定よりも早く不活化される、と言うのであれば、めでたい話です。

    ただし、室内でガラス越しでは、ほとんど紫外線、特に UV-B が透過しませんので、 紫外線による不活化は期待できません。 また、コロナウイルスはインフルエンザウイルスと同じ一本鎖RNAですが、 修復酵素を持っているそうなので、もう少し紫外線耐性が高い可能性があります。

    そもそも、物体の上でウイルスが感染力を保つ期間は数日程度と言われており、 例え海外の感染国から送られてきた物であっても、 数日かけて輸送されてきた物であれば、問題は無いと考えられます。

  • コロナウイルス、感染力を保つ長さは? 空気中は3時間
    https://www.asahi.com/articles/ASN496K3XN47PLBJ007.html?ref=mixi

     

    UV-C を用いた殺菌灯の場合

    (2021/08/26 改訂)

    一方で、広く殺菌に用いられている UV-C の殺菌灯ではどれぐらい時間がかかるかも計算してみました。 パナソニックの殺菌灯のサイトによると、 8Wの殺菌灯の紫外線出力は 2.5W だそうです。 私の手元の製品は長さ 30cm の直線状なので、15cm 離れた円筒を考えると 面積は 2826cm2 となります。 若干軸方向にも広がりますが反射などもあるので無視します。
    以上から、15cm の距離では、0.88 mW/cm2 となりました。 あれ、太陽光より弱い・・・と思ったのですが、波長が違います。 岩崎電気のデータによると、6.6 mJ/cm2 で 99.9% = 1/1000 までインフルエンザウイルスを不活化、 ですから、2.2mJ/cm2 毎に 1/10 となり、8.8mJ/cm2 で 1/10000 まで減らせます。 0.88 mW/cm2 では、10秒程度で不活化できる計算となります( W(ワット) = J(ジュール)/s です)。 他のデータも合わせて下の表で比較してみました。 低減率の 10-3 というのは, 1/1000 に減らす、99.9% 滅菌・不活化させる、と言う意味で、 Wintec のデータでは明示されていませんが、おそらく10-3 だと思います。 また、スタンレー電気では、ある条件での照射時間で整理されていますが、 インフルエンザや大腸菌の値を見る限り、大体そのまま mJ/cm2 だとして 読んでしまって良いようです。 このサイトのみ、ヒトコロナウイルスの値が出ており、 インフルエンザウイルスの 3.6倍不活化されやすい、と言う非常に興味深い結果が示されています。

    高橋先生の論文では、UV-C の光源として、日亜化学の 280nm の LED を使用していました。 他のデータは一般的な 254nmの殺菌灯を用いているため、これにより大きな違いが生じていると考えられます。 他にも条件が異なる可能性がありますが、以後岩崎電気などのデータをリファレンスとして、 やや安全側に倒して 10mJ/cm2 と言うのを 殺菌灯による消毒を行う際の一つの指標としてはどうかと考えています。 この 10mJ/cm2 という値は、WHO 飲料水水質ガイドライン(第3版:平成16 年)によれば、水に照射することにより、当該水中のクリプトスポリジウムを99.9%不活化することができると、2019年の「水道水中のクリプトスポリジウム等対策の実施についての一部改正について」【薬生水発0529第1号】において記載されており、この改訂前は 10mJ/cm2 が水道水消毒の指標となっていました。 (現在は、「クリプトスポリジウム等を99.9%以上不活化できる紫外線処理設備」と改訂されています。)

     

    ソース 徳島大学
    高橋先生論文
    岩崎電気 スタンレー
    電気
    Panasonic Wintec
    低減率 10-3 10-3 10-3 10-3 不明
    単位 mJ/cm2 mJ/cm2 sec mJ/cm2 mJ/cm2
    大腸菌 5.4 4.7 10.8 6.6
    緑膿菌 16.5 4.8 16.5 10.5
    レジオネラ菌 7.5 3.3 7.6
    インフルエンザ 75 6.6 6.3 8
    ヒトコロナ 1.7

     

  • 紫外線殺菌の効果に関する研究(引用文献にウイルスへの研究あり)
    https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjps1957/39/5/39_5_939/_article/-char/ja/

  • アズワン 殺菌灯の殺菌効果
    https://www.as-1.co.jp/academy/11/11-2.html

  • WINTEC 紫外線殺菌装置の紹介で、不活化に要する紫外線照射量がまとめられています。
    http://www.info-niigata.or.jp/~wintec/uv_.sterilization.htm

     

    (2021/08/02) update

    既に、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対して、UV-C が有効である事が実験的に報告されています。 3) についてはニュースリリースであり査読は行われていませんが、 それ以外の論文については全て査読が終了しています。

    1) UV-C irradiation is highly effective in inactivating and inhibiting SARS-CoV-2 replication,
    Mara Biasin et al., Scientific reports, 11 (2021) 6260_1-7.
    https://doi.org/10.1038/s41598-021-85425-w

    2) Rapid and complete inactivation of SARS-CoV-2 by ultraviolet-C irradiation,
    Nadia Storm et al., Science Report, 10 (2020) 22421.
    https://www.nature.com/articles/s41598-020-79600-8

    3) Confirmation of effectiveness for inactivation of SARS-CoV-2, using our 265nm wavelength UVC LED technology,
    Stanley Electric Group- News Release(査読なし)
    https://contents.xj-storage.jp/xcontents/69230/7fea2858/b01a/4111/bc24/b78828436334/20200818113158036s.pdf

    4) Rapid inactivation of SARS-CoV-2 with Deep-UV LED irradiation,
    Hiroko Inagaki et al., Emerging Microbes & Infections, 9 (2020) 1744-1747.
    https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/22221751.2020.1796529

    5) Effectiveness of 222-nm ultraviolet light on disinfecting SARS-CoV-2 surface contamination, Hiroki Kitagawa et al., American Journal of Infection Control, 49 (2021) 299-301.
    https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0196655320308099

    1) (イタリア)3.7mJ/cm2 で 99.9% まで不活化。254nm 殺菌灯使用。
    2) (ボストン大)wet で 5.3mJ/cm2, dry で 4.1mJ/cm2 程度で 99.9% まで不活化(グラフを秋吉が作成しフィッティング、評価した)。254 nm 殺菌灯使用。
    3) (スタンレー電気)5.1mJ/cm2 で 99.9% まで不活化。265nm LED使用。
    4) (宮崎大)37.5mJ/cm2 で 99.9% まで不活化。280nm LED使用。
    5) (広島大)1mW/cm2 の照射で 0.94桁、3mW/cm2 の照射で 2.51桁の不活化。(→ 3.6 mW/cm2 程度で 99.9%まで不活化)ウシオ電機 Care222 222-nm エキシマランプ。

    と言う事で、インフルエンザウイルスの 254nm 殺菌灯 6.6mJ/cm2 で 99.9% まで不活化、よりも 低い値となっており、新型コロナウイルスの紫外線耐性は低いと言えそうです。

    すでに査読が完了した 4) の論文は 280 nm LED のため必要な照射量が直接比較出来ませんが、 別途出版されている徳島大学高橋先生らの新しい論文では、280nm LED でA型インフルエンザウイルスを 99.9% 不活化するのに、60mJ/cm2 程度必要で、これと比べても 37.5mJ/cm2 と言う値は小さく、 整合性が取れています。

  • Irradiation by a Combination of Different Peak-Wavelength Ultraviolet-Light Emitting Diodes Enhances the Inactivation of Influenza A Viruses, Mizuki Kojima, Kazuaki Mawatari, Takahiro Emoto, Risa Nishisaka-Nonaka, Thi Kim Ngan Bui, Takaaki Shimohata, Takashi Uebanso, Masatake Akutagawa, Yohsuke Kinouchi, Takahiro Wada, Masayuki Okamoto, Hiroshi Ito, Kenji Tojo, Tomo Daidoji, Takaaki Nakaya and Akira Takahashi, Microorganisms, 8 (2020) 1014-1028.
    日本語での解説 https://www.tokushima-u.ac.jp/fs/1/8/0/7/5/3/_/20200826-2.pdf

    もちろん、今後更なる検証が必要です。
    我々も照射のプロとして定量的な検証を進めているところです。

    ( 1), 3)-5) は2020/09/03 オプトロニクスセミナー, 旭化成 三矢様の講演で紹介頂きました。 2) は岩崎電気松尾様から紹介頂きました。多謝。)

    上記以外にもたくさんの論文が査読を通って出版されています。

  • SARS-CoV-2 Dose Response Research Update
    https://uvsolutionsmag.com/articles/2021/sars-cov-2-dose-response-research-update/
    様々な紫外線によるコロナウイルスの不活化論文について、実験上の問題点などを指摘しています。 照射照度の問題点について特によくまとめられており、非常に的確だと思います。 DeepL を使用して日本語訳したものをこちらにアップ しておきます。

  • Christiane Silke Heilingloh et al.,Susceptibility of SARS-CoV-2 to UV irradiation, American Journal of Infection Control, 48 (2020) 1273-1275.
    https://doi.org/10.1016/j.ajic.2020.07.031

  • Edward I. Patterson et al.,Methods of Inactivation of SARS-CoV-2 for Downstream Biological Assays, The Journal of Infectious Diseases, 222 (2020) 1462-1467.
    https://doi.org/10.1093/infdis/jiaa507

  • Brahmaiah Pendyala et al., Genomic Modeling as an Approach to Identify Surrogates for Use in Experimental Validation of SARS-CoV-2 and HuNoV Inactivation by UV-C Treatment, Frontiers in Microbiology, 11 (2020) 572331_1-9.
    https://doi.org/10.3389/fmicb.2020.572331

  • UV Solutions (論文データでは無くまた英語ですが、紫外線に関する膨大な情報が集められています) https://uvsolutionsmag.com/


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    ウイルス不活化に有効な紫外線ですが、弱点もあります。

     

  • 紫外線の強度は距離によって放物線的に減少します
  • 放射線教育分野 でお世話になっている、教材会社のケニス様 から販売されている紫外線強度計 ( SDカード式紫外線強度計 YK-37UVSD )を用いて、 紫外線強度を実測してみました。
    その結果、Panasonic の 8W の滅菌灯 GL8 は、15cmの距離で 1.1mW/cm2 となり、 放射線と同じようにきれいに距離の二乗に反比例して減衰しました。 有限の大きさのランプと、測定用のプローブの原点をどこに取るか、で値は変わってきますが、 上で計算した値と良い一致を示している、と言えます。


    パナソニック GL8 及び NEC GL6 滅菌灯から出力されたの紫外線強度の距離依存性

     

  • 紫外線、特に UV-C は透過率が非常に小さく、紙一枚で止まってしまいます。
  • このため紫外線による消毒を行う際に、照射容器内にたくさんのものを詰め込んでも、 ごく表面だけが照射されて影になる部分には全く紫外線が届かずに消毒されていません。 紫外線消毒の大きな弱点ですので、注意する必要があります。 逆に、ごく薄いゴム手袋程度でも遮蔽されますので、安全に取り扱うことが出来ます。 肌への影響と言うことで日焼け止めをテストしているところですが、余り強い遮蔽は出来ないようです。

    様々な物の透過率を求めてみました。 放射照度計のプローブの前に、対象物を入れた場合と入れなかった場合の比較という かなりアバウトな実験ですが、同じ透明に見えるプラスチックでも、 マスクリーン4 で容器として使用しているコンテナの材料、 ポリプロピレンは比較的透過率が高く、遮蔽をしないと UV-C が漏洩してしまう、 と言う事が分かりました。 このため、青白い光が直接見えている場合、アルミテープなどで補修が必要です。 アルミシートを通してうっすら光が見えるのは問題有りません。 表面で実測しましたが、検出限界以下でした。

    遮蔽前 I0 遮蔽後 I 透過率
    遮蔽物 mW/cm2 mW/cm2 %
    メガネ(プラレンズ) 1.10 0.000 0.0
    ペットボトル横置き(空) 1.10 0.000 0.0
    ポリスチレン(1.4mm厚コレクションケース) 1.10 0.000 0.0
    ポリプロピレン(1.5mm厚コンテナケース) 1.11 0.288 25.9
    コンテナ遮蔽用アルミシート 1.12 0.003 0.3
    サージカルマスク (平面) 1.10 0.080 7.3
    サージカルマスク (プリーツ開いて) 1.10 0.140 12.7
    塩ビラップ 6μm厚 1枚 1.11 0.952 85.8
    塩ビラップ 6μm厚 2枚 1.11 0.900 81.1
    塩ビラップ 6μm厚 4枚 1.11 0.660 59.5
    ニトリル手袋(モノタロウ、青)生地1枚 1.70 0.000 0.0
    クアラテック手袋(アズワン)生地1枚 1.70 0.000 0.0
    コピー用紙(再生紙) 0.70 0.000 0.0
    コピー用紙(高白色) 0.70 0.000 0.0

     

    距離の逆二乗に比例して強度が下がり、 遮蔽によっても弱まる、後は時間が短ければ照射量は少ない・・・
    そう、紫外線の照射の話は、放射線防護の話と非常に良く似ています。 放射線は透過力が強いため、単位重量あたりの吸収エネルギー (J/kg = Gy) を、 紫外線は透過力が非常に弱いため、単位面積あたりのエネルギー (W/cm2) を使って表わすという違いはありますが、 本質的な取扱いは同じです。

     

     

  • UV-C 紫外線は人体に有害です。
  • UV-C を直接人体に照射しないで下さい!

    目に入ると非常に危険です。散乱線でもかなりの痛みを伴います。 皮膚にあてても紅斑が出来たりしますし最悪皮膚癌になります。 また、プラスチックなどは長時間の照射でボロボロになりますし、 衣類、家具などの色素や繊維も劣化します。 ほとんど、放射線の取扱いと同じだと思って下さい。

    185nm の波長も出せる合成石英管を使用した UV-C 殺菌灯ではオゾンも発生するので、 使用後はしばらく換気を行う必要があります。 (溶融石英を使用した一般的な殺菌灯は220nm以下はカットされ、オゾンは発生しません。 オゾンが出るランプでも、ラップを二巻きほどすると185nmの成分はカットされ、オゾンは発生しなくなります)

     

    照明学会/日本照明工業会からの「紫外線殺菌 ご利用上の注意」ガイドブック

    2020年10月から日本照明工業会の「消毒殺菌用 UV放射小委員会」の傘下に「UV-C紫外放射製品の安全ガイド作成WG」を立ち上げていただき、東海大学の竹下先生、殺菌ランプに関連した様々なメーカーの方達と共に紫外線殺菌を行う上での注意点をまとめたガイドブックを作成致しました。最終的に照明学会にも確認いただき、照明工業会との連名で冊子を出す形となっています。

    今回のパンレットは不要な被ばく事故をなくすための安全上の注意点がメインで、 こうやって照射すると殺菌・不活化出来る、というガイドライン的位置づけのものではありませが、 厚労省 医療機関における院内感染対策について(H26) における、「紫外線照射等については、効果及び作業者の安全に関する科学的根拠 並びに想定される院内感染のリスクに応じて、慎重に判断すること」 への科学的根拠と捉えることが出来るかと思います。

    一般向けのわかりやすい表現について、まだまだ変えていかなければならない点が多々ありますが、今まで野放し状態だったところに一石を投じられればと思います。

  • 日本照明工業会のホームページ
    https://www.jlma.or.jp/

  • 「紫外線殺菌 ご利用上の注意」パンフレット
    https://www.jlma.or.jp/siryo/pdf/pamph/notice_UV-light-emitting.pdf


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    市場に出回っているいい加減な紫外線装置について

    アマゾンなどで紫外線消毒の製品(滅菌器)が大量に売られていますが、 照射強度が一切書かれていません。

    中国製の蛍光管を用いた殺菌灯は、製品毎に出力が10倍ぐらい違い、 最も強い物でも国産の半分程度の強度であるため、 国産のランプに交換してマスクリーンを製造しています。

    さらに、某大手イベント関係の会社から持ち込まれた UV-C LED を使用した製品を測定してみましたが、 BOX の中央部で 0.02mW/cm2 程度しか出ておらず、 マスクリーンS の 1/100 にすぎませんでした。

    さらに悪質な製品では、BOX 底面中央部では UV-C どころか UV-A も検出限界以下でした。 直近で測定すると UV-C 3mW/cm2, UV-A 1.5mW/cm2 程度出ていますが、 15cm 程度深さの BOX に物を入れた場合、ギリギリ0.0009 mW/cm2 で表示されなかったとしても 謳い文句の通り99.9% 不活化するとしたら、7.5mJ/cm2 必要ですから、 8300秒ほどかかり、非現実的です。全く使い物になりません
    なお、測定を行ったプローブは厚さが 2cm程あるため、一般的な厚さの物品を模擬しています。 (掲載当初、一切放出されていないと書きましたが、ベタ付けでは検出されました。訂正します) 物としては大変良く出来ており、ふたが開くと電源が切れるなどの安全対策もされていますが、 肝心の紫外線が出ていないのでは、安全だと思って使った物で感染するという、 極めて危険な商品です。

    アマゾンには同様の製品が多数出品されており、 どのように対策を行うのか問い合わせたところ、 「感染して死亡した場合、お手数ですが、当サイトにご連絡をお願い致します。 当サイトはお客様の問題が解決するまでにサポート致しますので、ご安心下さい」 との返事が来ました。 本人が死亡していた場合どう連絡するのでしょうか。

    私はこの問題を極めて重く見ており、内閣官房の新型コロナウイルス感染症対策推進室 と連携してこのようなデタラメな製品を駆逐して、 きちんと検証されたまともな製品が国民の手に行き渡るように動いているところです。 このサイトをご覧の皆様で同様の製品を購入された方、郵送頂ければ測定致しますので、 製品提供をお願い致します。返送料はこちらで負担致します。

    (2020/07/15)追記
    Amazon で4点ほど購入して測定を行ってみました。 その結果、5cm の距離では もっとも強い製品 で 0.04mW/cm2 程度で、 次いで 0.03mW/cm2 程度 0.02mW/cm2 程度となり、 製品によっては検出限界以下となりました。 5cm の距離で照射できるのはせいぜい直径5cm程度の範囲で、 1/10000まで不活化する場合、0.04mW/cm2 の製品でもじっと250秒保持する必要があります。 99.9%(=1/1000) としても 3分以上です。とても現実的とは言えません。

    (2020/11/23)追記
    さらに、これらの LED を用いた製品では、 280nm 程度の波長の物がほとんどで(分光放射照度計で確認しています)、 殺菌灯波長の 254nm よりも大きく効果が落ちます。 新型コロナウイルスに対しては、殺菌灯からの 254nm の紫外線では 1/1000 まで感染価を下げるのに 4mJ/cm2 程度の積算照度で良いのに対して 280nm では 37.5mJ/cm2 程度の積算照度が必要です。 また、インフルエンザウイルスに対しても、254nm では 1/1000 まで感染価を下げるのに 6.6mJ/cm2 程度なのに対して 280nm では 60mJ/cm2程度必要と、 おおよそ 10倍の積算照度が必要です。

    詳細なレポートはこちら


     

    (2020/05/19)

    ウシオ電機の 222nm 紫外線 Care222 について

    5/18 に放送された、TBS の「あさちゃん!」および「Nスタ(関西では放映されていないので内容未確認)」でコメントを取り上げて頂いた 222nm の「遠紫外線C波」ですが、以下の様に日本のウシオ電機の製品、技術です。神戸大学でも共同研究を行っています。コロンビア大とは独占ライセンス契約や、研究委託契約を行っているようですが、あくまでも「日本発の技術」です。

  • Care 222 とは?
    https://clean.ushio.com/ja/care222/
  • ウイルスを不活化する「222nm紫外線殺菌・ウイルス不活化ユニット」の開発について
    https://kyodonewsprwire.jp/release/202003037628
  • 皮膚がんなどの発症なし 222nm紫外線(UV-C)繰り返し照射の安全性を世界で初めて実証(神戸大学)
    https://www.kobe-u.ac.jp/research_at_kobe/NEWS/collaborations/2020_03_30_01.html
  • 紫外線ランプ、新型コロナとの闘いに光明か 米大が実験
    https://www.afpbb.com/articles/-/3283035

    人体に安全でかつウイルスを不活化出来る、というのは以下の様な仕組みによる物です。 (直接ウシオ電機の担当者に確認致しました)
    紫外線は、波長が短く、エネルギーが高くなると物体に吸収されやすくなり、 222nm の波長では皮膚ごく表面の 20μm 程度の厚さの角質層などで止まってしまいます。 そのため生きている細胞にまで到達せず、炎症や皮膚癌などを引き起こさない、 その一方で物体の表面に付着した直径 0.1μm 程度のウイルスの中までは届くため、 遺伝子に損傷を与えて不活化できます。

  • 岩崎電気 紫外線殺菌
    220nm付近でDNAへの吸収が大きくなっており、260nm の殺菌灯の 7割程度の効率になっています。殺菌作用は小さくなっていますが、ウイルスよりも大きい菌(直径1μm程度)の細胞質の中のDNAまで到達する量が少なくなる、と言う事かと思います。
    https://www.iwasaki.co.jp/optics/chishiki/uv/02.html

  • 参照紫外可視吸収スペクトル (様々な物質の吸光度波長依存性が網羅されています)
    https://www.pmda.go.jp/files/000203148.pdf

    なお、 Care222 の紹介サイトでは、「当ユニットは現在(2020年6月時点)開発中のため、販売は行っておりません。」とのことで、「日本国内向けには、当初の販売開始時期(2021年初頭を予定)を前倒しし、2020年9月からの販売開始を予定しております。 なお、販売については代理店を通して行うことを予定しており、取り扱い代理店については2020年7月頃に弊社Webサイト上でお知らせいたします(個人のお客様への販売については未定となっております)。」ということで、普及についてはまだもう少しだけ先という事になるようです。

     

    テレビなどで使われている「遠紫外線C波」という用語ですが、 遠紫外線と UV-C がごっちゃになったような言葉で、余り一般的な用語では無いと思います。 遠紫外線については、ウシオ電機のサイトによると、空気による吸収が始まる波長域から軟X線波長域までの紫外線のことで、波長範囲についてはさまざまな用例があるが、10nmから200〜220nmの間までの波長域とすることが多い、とのことです。 今回の 222nm の紫外線を指す場合は単純に遠紫外線で良いかと思います。

  • 遠紫外放射
    https://www.ushio.co.jp/jp/technology/glossary/glossary_a/far_ultraviolet_radiation.html

    しかし、上記のサイトでも、
    「波長250、300、350nm以下の紫外放射を深紫外放射またはディープUV(Deep-UV、DUV)と呼ぶこともある。この言葉は、もともとIBMのDr.Linが使った言葉で、彼の概念では200〜300nmの波長域であった。」
    とのことで、「紫外線」と言った場合は注意が必要なようです。

    某社の空気清浄機が某社のテレビ番組で
    https://az-news.yojipapa.com/shinshigaisen-32598
    と言うような取り上げられ方をされて居ますが、調べてみると 使用している「深紫外LED」は、単なる UV-C 波長域の物でした。
    https://www.nikkiso.co.jp/products/duv-led/features.html
    もちろん空気清浄機としては中から外に UV-Cは漏れてこないと思いますし、 ミヤネ屋でも紹介したサンスターの QAIS-air-01 同様、UV-C + 光触媒ですから、製品としては素晴らしいと思います。

    一般的な 260nm 前後の殺菌灯波長の UV-C と、 222nm の「狭義の遠紫外線」を混同すると大変危険です。 業界関係者で用語など統一して欲しいと思いますが・・・
    上記の番組は、
    「深紫外線・遠紫外線とも言われますが、波長の短い部分を使うので人に対しても害が少なく、LEDでも出せるそうで、これから色んな場面で使われる可能性があります。」
    とコメントしているそうで、いろんな意味で間違っています。 少なくとも 222nm の波長は LED では出せません。


  • ちなみにもっと波長が短くなり、200nm 以下になると、 酸素分子、窒素分子に吸収されてしまい、大気中では使えなくなります。 電子回路のパターンの焼き付けなどには、真空中でこの波長の短い紫外線を使用しており、 「真空紫外光」などと呼ばれています。

  • 真空紫外(VUV)域とは
    http://www.oceanphotonics.com/application/tec_vuv.html

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    マスクのウイルス不活化 BOX マスクリーン

    ただ単に UV-C 殺菌灯を仕込んだ箱です。

    殺菌灯によるマスクの不活化について検討するための、研究開発品です。

    2020/05/18 の NHK 「ニュースシブ5時」、
    2020/05/29 の MBS 毎日放送 ミント!、
    2020/06/02 読売テレビ放送「情報ライブ ミヤネ屋」、
    2020/06/03 関西テレビ「報道ランナー」
    で取り上げて頂きました

         

     

    国産の 8W の滅菌灯 GL8 と、 中国製の器具(JP-T5-UV) を利用した現在量産しているマスクリーン4 (正面位置 5cm の距離では 1.5mW/cm2 を保証)については、 下で示す実測値から、各ブースでの中央での線量 0.5mW/cm2 を計算に使用し、 安全側に考えて 10mJ/cm2 で 1/10,000 まで不活化が可能とすると、 20秒の照射で 1/10,000 まで不活化が可能であると計算されます。

    医療現場用の GL8 を使用したマスクリーン4 は、わずか20秒で4枚の処理が可能ですから、 感染の可能性がある度に頻繁に処理することで、感染率を下げられるのではないかと期待します。 世間ではかなりサージカルマスクの供給は余裕が出てきているようですが、これならば、医療現場においてマスクの使用数を抑える以上の効果が期待できます。

    6W の殺菌灯 GL6 (器具はJP-T5-UV) を使用したマスクリーンS は、一度に一枚の処理ですが、 ランプとマスクの距離が近く、わずか5秒で1/10000まで不活化が可能な計算となっています。 こちらは個人向けですが、医療機関でも個人個人が頻繁に不活化したい場合などにニーズがあるのではないかと思います。

    マスクに対する紫外線の透過率を求めてみました。 その結果、サージカルマスクを平面状にたたんだ形でも 7.3%、 プリーツを開いて重なりを無くすと 12.7% が裏面まで透過する、 と言う結果が得られました。
    基本的にウイルスが付着しているとしたらマスクの外側であり、 内側に行くほど数は少なくなりますから、外側からだけ照射すれば十分で有ると思います。 もちろん、10秒程度で不活化できる、と言う結論が出ましたので、 両面照射しても大して時間はかかりませんが。 裏返す際はピンセットなどを使用して、ピンセットも BOX 内に入れて照射すると良いでしょう。

     

    立体的なマスク表面での照度を測定するため、 放射線計測で用いられるラジオクロミック線量計(薄い小さなフィルムの着色で線量を評価する)を用いて、 紫外線照度計測を行ってみました。 予備実験での距離依存性の評価から、線量計として評価される照射量 I (kGy) と、 紫外線の照射量 D (mJ/cm2) には相関があり、D = 1.4 I と言う簡単な式で表せます。 理論的にも、吸収線量とは、単位質量あたりの吸収エネルギーであるという基本に立ち帰り、 表面からの深さ14μmまで範囲で均等に全エネルギーが吸収されるとすると上記の式が説明できます。 (フィルムの厚さ45μm以下で全紫外線が吸収されていることが確認されています)

     

       

       

     

    放射線の吸収線量として評価された値を、照射時間と換算式から、 紫外線強度として分布を示してみます。単位は mW/cm2 です。
    なお、マスクリーン4の測定に使用した測定用標準殺菌灯は、 製品に現在使用している物よりも弱く、 検査ではねられた物を使用しています。 5cm での距離での紫外線強度は 0.75 mW/cm2 程度で、 現在提供している 1.5 mW/cm2 @ 5cm 保証(全数検査しています)の製品の、 半分の強度です。 (上で示した国産の器具と Panasonic の GL8 の組み合わせとは4倍以上の強度差があります) この値を倍にして、10 mJ/cm2 達成に必要な時間を見積れば良い訳です( W = J/s です )。
    マスクリーンS については、製品に使用している物をそのまま使用しています。

    概ね、上での測定と良い一致を示しており、 枕を設置して傾けることで全体的なムラを少なくすることが出来る事が分かります。 また、照射面の裏面にも半分から1/4程度の量が透過/反射して、 あたっているいることが分かります。 100% 絶対という事は出来ませんが、概ね全体的に不活化できていると言えます。 もちろん、より高い安全性を求める場合は、 指定の時間よりも適宜照射時間を延ばして照射量を上げて下さい。

     

     
    マスクリーン4底面(左)と、マスクを設置した表面(右)での紫外線強度評価結果

     


    マスクリーン4に枕を設置して、その上に置いたマスク表面での紫外線強度評価結果

     

       
    マスクリーン4に設置したマスク内側(左)、マスクリーンSに設置したマスク外側(中)、内側(右)の紫外線強度評価結果

     

     

  • 紫外線によるマスクの劣化について
  • 紫外線によるマスクの劣化ですが、日経メディカルの記事 によると、 サージカルマスクの場合は、20分間と言うかなり極端な時間の UV-C 滅菌灯の照射により、 0.3μm以上の粒子の透過率が 3.7% → 6.3% に、 そして空中浮遊ウイルスの透過率が 4% → 6% に悪化したと言う事です。 余り繰り返すとマスクの性能は劣化するようです。 どの程度の照射で性能が劣化していくのかは、今後研究対象としたいと思います。
    サージカルマスクはそもそも感染を広げないための物で、 余り問題とはなりませんが、アルコール洗浄すると 0.3μm以上の粒子の透過率が 3.7% → 9.9% に、 そして空中浮遊ウイルスの透過率が 4% → 12% に悪化したと言う事で、 紫外線の場合よりもはるかにダメージが大きいです。

    また、医療用の N95 マスクですが、これは UV-C 照射により 0.3μm以上の粒子の透過率が 0.2% → 1.1% に、 そして空中浮遊ウイルスの透過率が 1% → 8% に悪化したと言う事で、 ウイルスの透過率がサージカルマスクより落ちています。 不活化に必要な短時間の照射でどの程度劣化するかが気になりますが、 データが無いうちはやめておいた方が無難かと思います。
    なお、N95 マスクをアルコール洗浄すると、極端に劣化して使い物にならなくなります。 0.3μm以上の粒子の透過率が 0.2% → 14.1% に、 そして空中浮遊ウイルスの透過率が 1% → 35% と、スカスカになります。

     

  • 大阪府立大学 電子物理 高橋 和 研究室
    http://www2.pe.osakafu-u.ac.jp/pe9/

    SEM によるサージカルマスクの詳細な微構造観察結果と、 フィルター性能のアルコール洗浄や水洗い後の評価を、 本学工学研究科電子物理工学分野の、高橋 和先生が分かりやすくまとめています。 濡らしてしまうと極端に性能が劣化するようです。 洗濯したり、煮沸するのは、避けた方が良いようです。 まあ、サージカルマスクに何を求めるか、と言う話にはなりますが。

     

  • N95/DS2マスク枯渇対策としての滅菌再利用前後の粒子捕集効率の変化
    https://youtu.be/1curbb_aNds

    慶応大学理工学部応用化学科 奥田知明教授が、 蒸気滅菌(80℃30分)とオゾン滅菌による N95/DS2 マスクの処理前後の、 粒子捕集効率をパーティクルカウンターで評価しています。 これらの処理ではほとんど粒子捕集効率が変化しないことが明らかになっています。 (再利用を推奨する物では無く、それを理解している医療従事者向け情報です)

     

  • 沖縄科学技術大学院大学 UVC殺菌ユニット
    https://www.oist.jp/ja/covid-19/community-projects/uvc-sterilization-units

    「N95マスクを効果的に殺菌するために必要なUVC線量を直接測定により確立したところ、N95マスクでは、他の材料表面で以前に報告されたよりも100〜1000倍高いことを発見しました。 チームはまた、殺菌後のN95マスクのフィルタリング効率を確認するためのテストも開発しました。喉の後ろにセンサーを備えたCPRダミーを使用し、ダミーが呼吸をシミュレートする時に通過するサブ300 nm粒子数をセンサーがカウントしました。このテストでは、ダミーにN95マスクがある場合とない場合の両方で行い、マスクのフィルタリング効率を決定しました。理想的にはN95マスクは、300 nm未満の粒子の95%をフィルタリングできねばなりません。チームは、適切な線量による複数回のUVC殺菌を行っても、マスクのフィルタリング能力は変わらないことを確認しました。」とのことです。「殺菌するために必要なUVC線量」の測定法、絶対量については記述がありません。

     

  • 【開発中】新型コロナウイルス対する有効性も確認されました! 深紫外線LED搭載 N95マスク3枚同時殺菌可能(99.9%殺菌) https://premium.ipros.jp/nikkisogiken/product/detail/2000510208/

    「PearlSurface 24G9は、700mJのパワーで対象物の殺菌を行い、現在問題となっているN95マスク不足の中、N95マスクを3枚同時に紫外線殺菌し、マスクの再利用が可能です。」 「15分でN95マスク3枚同時殺菌可能」とのことですが、やはりマスクに照射する紫外線量については記述がありません。

     

    【注意】 N95 マスクは製品によって全く形状、構造が異なります

    ウイルスを捕集する高性能フィルターは表面には出ておらず、撥水加工された表面のフィルターの中に入っています。そのため、内部まで透過して不活化するのに必要な紫外線量は製品によって異なります。フィルター繊維の紫外線に対する耐性も調査が不十分です。

    安易に N95 マスクを紫外線で再利用するのは控えて下さい。

    均一に加熱する、マスクのホイル焼きが、不活化には最も適していると思われます。 蒸気滅菌(80℃30分)では捕集効率は下がらないことが確認されています。 今後、高橋先生と協力してオーブンで 100℃ 15分加熱後の捕集効率測定なども実施してみようと思います。

     

    (2021/01/11)

    日本放射線安全管理学会の第19回大会に於いて、 指導する学生のポスターが
    優秀ポスター賞を受賞しました。

    P-05 N95マスクにおける紫外線量の定量的評価
    (大阪府大・工)○圓堂寿敏、秋吉優史

    発表資料はこちら

    ラジオクロミックフィルムを用いて、N95マスクのフィルター内部での紫外線量を評価しました。 その結果、製品によって差異が大きく、高性能フィルターにほとんど紫外線が到達しない製品もあり、 N95 マスクの再利用に紫外線を用いる場合、製品毎に確認を行う必要があることが明らかになりました。 なお、11ページ目の結果の(網目)としている製品の結果は、 最外層の網目を一層目とカウントしてしまっているため、非常に透過率が高くなっていますが、 実際には二層目としている層が他の製品での一層目に相当する物です。


    (2020/06/23 追加)

  • Application Note ・ UVP Crosslinker
    https://www.bmbio.com/Portals/0/product/upload/849-95-0615_application.pdf

    「FDA報告書によると、N95マスク表面のUVGI処理に必要十分線量は 1J/cm2となっています」* として、UV-C による N95 マスク処理装置が販売されているようです。 表面での不活化に必要な量の 100倍ですから、透過率によっては妥当な数字と言えるかも知れません。

    * Heimbuch, B. & Harnish, D. Research to mitigate a shortage of respiratory protection devices during public health emergencies. (2019).
    https://www.ara.com/sites/default/files/MitigateShortageofRespiratoryProtectionDevices_3.pdf

    上記の FDA 報告、の原典です。275ページもある膨大なデータの報告書になっています。 さすがにまだ全然読めていません。誰か読んで内容を取りまとめて教えて下さい・・・・

     

  • COVID N95 DECON (英語のサイトです)
  • https://www.n95decon.org/publications
  • UV-C を用いての再利用
  • 加熱による再利用

     

  • 煮洗い、アルコール消毒、紫外線照射…ウイルス対策マスクの再利用は可能か?
    http://j.people.com.cn/n3/2020/0203/c95952-9653703.html

    マスクの再利用について、問題点を提唱している情報もあります。 ソースが中国ですので、何らかの意図が入っている可能性もありますが、 (紫外線照射についてもこちらの記事はどの程度の時間照射したかの情報もありません) 完璧に復活させられる訳では無い、と言う点は覚えておいても良いでしょう。 N95 はそう簡単に再処理できない、と言う点は一致しています。 いかに限られた資材でリスクを下げるか、を考える必要があります。

     

    一方で過酸化水素蒸気を用いた再利用システムがアメリカでは開発されているようです。

  • 医療用マスク不足の解消に前進。N95マスクの再利用を可能にする除染システムが開発される(アメリカ)
    https://news.biglobe.ne.jp/trend/0424/kpa_200424_0516825781.html

    これを受けて、厚労省から「N95 マスクの例外的取扱いについて」との事務連絡が出ています。
    https://www.mhlw.go.jp/content/000621007.pdf
    これによると、過酸化水素水プラズマ滅菌器を用いた再利用法、過酸化水素水滅菌器を用いた再利用法、1人に5枚のN95 マスクを配布し、5 日間のサイクルで毎日取り替える再利用法が挙げられています。

     

    手先のウイルス不活化 BOX, Raise Your Hands IN Me

     

    2020/05/29 MBS 毎日放送 ミント! 放送で取り上げて頂きました。

    ただ単に UV-C 殺菌灯を 2本仕込んだ箱です。

  • 本製品は一般向けでは無く、感染症患者受入れ病院や、BSL3 実験室など、 感染の恐れの高いプロ向けの製品です。手袋をしていることが前提です。

  • マグネットでスチール製ロッカーなどに貼付け、 下から手袋をした状態の手を入れて両面を同時に不活化します。
  • ランプから手指の距離は 3cm以下であり、現在使用している器具・ランプの組み合わせ (5 cm で1.5 mW/cm2 以上を保証)では、 6秒以下で 1/10,000まで不活化が可能です。
  • 手を最大限上げていくと手首部分の不活化も可能です (タイベックスーツなどを着用していて皮膚の露出が無いこと前提です)。 マグネット貼付けのため、体格に合わせて高さを調整可能です。
  • フットスイッチにより手を触れずにON/OFF を行う事が可能で、感染を拡大しません。 手先が触れる可能性のある部分は紫外線照射を受けるため、 使用時は常に不活化されています。
  • ニトリル、ラテックスといった素材の手袋は、 一枚だけで至近距離からの UV-C 照射を十分遮蔽し、 手先の皮膚にダメージを与えることはありません。
  • 現在、特注の一品物となっています。 需要に応じて量産を行います。


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    光触媒

    光触媒は、1967年に本多・藤嶋効果によって水が酸素と水素に分解することが発見されて以降、 日本発の技術として注目され、開発が続けられています。 近年も、「人工光合成」として大規模な実証が行われています。

  • NEDO 世界初、人工光合成により100m2規模でソーラー水素を製造する実証試験に成功
    https://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_101473.html

    光触媒の表面に光が当たると、太陽電池と同じように電気エネルギーが発生します。 太陽電池はこのエネルギーを電線を通して電力として取り出しますが、 光触媒は 表面に活性酸素などのラジカルを形成して有機物を酸化分解します。 既に建物の外壁や自動車などで汚れが付きにくい塗料としてや、 消臭作用を示すスプレーなどとして販売されています。 特に TiO2 は光触媒として長い歴史があり、 内装用の壁紙に光触媒を組み込んだ物も販売されています。

    試しに、雑菌が湧いて、洗っても繊維の奥にしみこんだ雑菌臭が取れない、 もはや捨てるしか無いレベルのタオルに、 下で挙げているタングステン系の光触媒をスプレーして室内光に一日曝してみました。 その結果、1m先からでも分かるような臭いだったタオルが、 顔を埋めて臭いをかいでもほとんど分からないレベルになっていました。 物凄い分解力です。 なお、洗うと光触媒が次第に取れてしまうので、持続的な効果は望めませんが、 逆に洗わなければ表面に残っている限り半永久的に効果を発揮します。 クロス張りのソファーやカーテン、枕などがお勧めです。 某中年男性 の枕に使用したところ、加齢臭が無くなったとの報告があります。
    余り強い光が当たるところでは、発生したラジカルが担体を痛めることがあるかも知れませんが、 室内ではその心配はまず無いでしょう。 (一昔の白色塗料では、屋外で長期間使用するとバインダーがやられて白い粉が浮くときがありました)

     


    光触媒の機能発現の概念図

     

    光触媒の原理については以下を参照。

  • TiO2 光触媒の基礎と最新開発動向
    元のリンクの
    http://polar.imr.tohoku.ac.jp/_userdata/photocat2010.pdf
    が切れているため暫定的にこちらを。

    TiO2 は化粧品や日焼け止めにも使われていたりして、非常に安全な物質です。

    私が東工大で博士課程の1年目は良いテーマが与えられず、 依頼されたネタで書いた化粧品微粉末に関する論文で、 二酸化チタンの透過型電子顕微鏡観察をしていました。 ルチル型(バンドギャップが3.0eVで可視光でも応答するが全体的な光活性が低い) とアナターゼ型( バンドギャップ 3.2eV で、387.5nm 以下の紫外線でないと活性を示さないが高い活性を示す) の違いにも言及しており、23年ぶりに自分で読んでビックリしました。

  • http://bigbird.riast.osakafu-u.ac.jp/~akiyoshi/Works/All_Works/1997-11_色材(2).pdf

    なお、化粧品などにはルチル型が使われていますが、 表面にはシリカがコーティングされており、光活性により肌にダメージを与えないようにしているようです。 (反射、吸収で紫外線を防いでいます)

  • 化粧品開発に用いられる紫外線防護素材
    https://www.jstage.jst.go.jp/article/sccj/48/1/48_2/_pdf

    スプレー式の光触媒を衣類、マスクや室内の表面に塗布するのも有効だと思われます。 これで完全にウイルスを防げるというわけではありませんが、 少しでも対策を取って確率を下げていく努力が必要かと思います。

  • 「100回洗っても効果」あるマスク販売 光触媒を活用
    https://www.asahi.com/articles/ASN4P3195N4NUOHB01H.html

  • 一般的な TiO2 光触媒の例。太陽光、紫外線などで機能する。
    http://www.amazon.co.jp/dp/B002A5KKZS

  • 部屋の照明でも機能するタングステン系の触媒を使用する、東芝 ルネキャット
  • https://www.toshiba-tmat.co.jp/res/renecat/
    二酸化チタンと異なり、三酸化タングステンベースの光触媒を使用するルネキャットは、バンドギャップが 2.5eV であり、495nm 以下の可視光(緑→青の領域)から活性を示します。太陽光はともかく、蛍光灯では紫外線量は微弱ですし、LED 照明ではほぼ全く紫外線が含まれていません。屋内での光活性を求めるのであれば、これらの製品が効果的です。 (二酸化チタンも銅などを添加することで可視光領域でも若干活性を示しますが、効率は低いです)
    なお、ルネキャットは、「吸着能力のある金属酸化物と触媒として利用出来る金属を WO3光触媒に添加することにより、ニオイ成分や細菌を光触媒に適正な吸着力で引きつけて、分解を促進させ、分解速度をさらに上げることができた」とのことで、単なる三酸化タングステンとは一線を画した製品のようです。

  • 快適な屋内空間を実現するW3可視光応答型光触媒, 日本画像学会誌_55(2016)449-454.
    https://www.jstage.jst.go.jp/article/isj/55/4/55_449/_pdf

  • ウイルスを酸化分解する新技術「ウイルスシールド」を開発 〜東芝マテリアルが技術協力〜
    https://www.komatsumatere.co.jp/wp-content/themes/komatsu/pdf/news/20200228.pdf


    ルネキャットを塗布したフィルム(2.5cm角に5mg)を用いた密着法で、蛍光灯の光(紫外線はカットした、可視光のみ)を当てると、A型インフルエンザウイルスは、4時間で 1000分の1、8時間で 100万分の1以下に減っています。
    https://www.toshiba-tmat.co.jp/res/renecat/about/data/virus_j.htm

  • 金属ナノ微粒子修飾酸化タングステンを用いた安価な光触媒の開発
    http://www.jfe-21st-cf.or.jp/furtherance/pdf_hokoku/2011/20.pdf

  • 室内でも使える可視光応答型光触媒を開発 衛生的で快適な生活空間を提供
    NEDOプロジェクト実用化ドキュメント
    https://www.nedo.go.jp/hyoukabu/articles/201318sdk/index.html
    銅添加すると、三酸化タングステンは可視光線下で高い活性を示すのに加えて、 暗いところでもある程度の不活化・殺菌力を示します。 光触媒と合わせることで二価の酸化銅が一価の銅に還元されることが重要らしいです。

    (2020/09/29)

    新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対して、TiO2/CuxO 系の光触媒が有効である事が 奈良県立大、東工大らの研究グループにより学問的に示されました。

  • http://www.naramed-u.ac.jp/university/kenkyu-sangakukan/oshirase/r2nendo/documents/syousai.pdf

    1000lux 可視光をガラス基板に担持した TiO2/CuxO に照射することで、 1時間で 99.7% ウイルスが不活化したとのことです。 (JIS R-1756 「ファインセラミックス−可視光応答形光触媒材料の抗ウイルス性試験方法−バクテリオファージQβを用いる方法」を参考)

    使用している光触媒が異なり、また暗条件でも不活化の効果が見られるなど ひかりクリーナーで使用しているフィルターとは条件が異なりますが、 可視光応答形光触媒による新型コロナウイルスの不活化の一つのエビデンスとなります。 ---------------------------

    (2020/11/23)

    カルテックの光触媒による「新型コロナウイルス」(SARS-CoV-2)の感染力抑制効果と 一定空間に浮遊する新型コロナウイルスに対する光触媒搭載の除菌脱臭機による感染力抑制効果を確認

    カルテック株式会社、理化学研究所、日本大学医学部が共同で日本大学内の BSL3 施設を用いて 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対する光触媒の有効性実験を行い、 感染力抑制効果を確認しています。

    また、光触媒を搭載した除菌脱臭機を用いて、一定空間(120L チャンバー)に浮遊する新型コロナウイルスに対する 有効性実験を行ったところ、回収したウイルス力価が検出限界以下であり、 感染力抑制効果を確認したとのことです。 つまり、空気清浄機として運転した際の光触媒の有効性を直接的に検証した と言う事です。 (もちろん、実空間では気流や様々な条件の違いで効果は大きく変わり、 有効性は簡単には評価できませんので、実使用環境での効果を示す物ではない、との但し書き付です)

  • ニュースリリース
  • 新型コロナウイルス不活化実証実験結果

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    (2021/06/17)

    昨年2月28日に、「新型コロナウイルス向けの抗ウイルス性試験を外部へ委託」と ニュースリリースが出ていた東芝の可視光応答光触媒「ルネキャット」ですが、 ようやく論文がパブリッシュされ、それに併せてニュースリリースされたようです。

  • 光触媒「ルネキャット」の新型コロナウイルスに対する感染力抑制の効果について
    https://toshiba.semicon-storage.com/jp/company/news/news-topics/2021/06/corporate-20210617-1.html

  • Masashi Uema, Kenzo Yonemitsu, Yoshika Momose, Yoshikazu Ishii, Kazuhiro Tateda, Takao Inoue, Hiroshi Asakura, "Effect of Photocatalyst under Visible Light Irradiation in SARS-CoV-2 Stability on an Abiotic Surface", Biocontrol Science, 26 (2021) 119-125.
    https://www.jstage.jst.go.jp/article/bio/26/2/26_119/_article/-char/ja/

    ただ単に SARS-CoV-2 ウイルスが不活化されました、だけではなく、 スパイクタンパクが減少している TEM 写真なども載っており、 メカニズムにまで突っ込んだ論文で、ここまで時間がかかったようです。 もちろん、しっかりと不活化させる効果が確認されています。

    光触媒が特定のウイルスに対して効果が無いことは考えられませんので、当然の結果ではありますが、 COVID-19 に対する工学的対策を考える上で、一つの大きな節目になるかと思います。

    カルテック社のグループも、405nm LED 光励起の酸化チタン光触媒での SARS-CoV-2 不活化の報告ですが、 エアロゾルとして噴霧した物に対しても検証しています。 こちらも、不活化しただけではなく、RNA やタンパクへの損傷について検討を行っています。

  • 光触媒で空気中に浮遊する”新型コロナウイルス”の感染性を検出限界以下まで消失させることに成功
    https://www.kaltec.co.jp/news/?p=10376
  • Ryosuke Matsuura, Chieh-Wen Lo, Satoshi Wada, Junichi Somei, Heihachiro Ochiai, Takeharu Murakami, Norihito Saito, Takayo Ogawa, Atsushi Shinjo, Yoshimi Benno, Masaru Nakagawa, Masami Takei and Yoko Aida, "SARS-CoV-2 Disinfection of Air and Surface Contamination by TiO2 Photocatalyst-Mediated Damage to Viral Morphology, RNA, and Protein", Viruses, 13 (2021) 942_1-14. https://www.mdpi.com/1999-4915/13/5/942

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    (2021/06/24)

    6月23日付けで、シャープからも光触媒の新型コロナウイルスに対する実証試験のニュースリリースが出ました。

  • シャープ独自の可視光応答型光触媒材料が新型コロナウイルスの ウイルス感染価を2時間で99.99%以上減少させることを実証
    https://corporate.jp.sharp/news/210623-a.html

    また、記事中で「太陽光だけでなく蛍光灯やLEDなど屋内照明の可視光にも応答する酸化タングステンを主成分に助触媒として白金(プラチナ)を配合することで高い酸化力を実現」と言う部分も見逃せません。 シャープからも可視光応答の光触媒スプレー MX-AZ03JK が販売されており、 今回試験した物と同一とは謳われていませんが、 (製品の宣伝で薬効を謳うことが薬機法で規制されているためと思われます) 試験結果全体を掲示することは妨げられていないと思われますので(*)、 今後の情報に期待しましょう。

    東芝ルネキャットとの比較ですが、先日のニュースリリースによると、 ルネキャットは 4g/m2 塗布、3000 lux 照射 6時間で 99.2% 以上不活化に対して、 シャープ製の光触媒は塗布量が不明ですが、1000 lux 1時間照射で 98% 以上、2時間で 99.99% 不活化となっており、高い性能を示しています。どちらも、JIS-R1756 「ファインセラミックス−可視光応答形光触媒材料の抗ウイルス性試験方法−バクテリオファージQβを用いる方法」に準拠した試験法のように見受けられます。

    もちろん、これらの試験は実験室レベルの物であり、 一定の環境で光触媒が新型コロナウイルスを不活化できることを示したに過ぎません。 実際の環境で利用して、「感染制御」にどの程度効果があるかは、未知数です。 今後の研究が期待されます。

    (*) 製品評価技術基盤機構 NITE では、光触媒製品に対する国際基準に基づく認定を受けた 試験機関の紹介を始めており(1)、その報告書の取り扱いについて、「薬機法に抵触しない範囲で、報告書の全ページをウェブサイトに掲載することは問題ありません」としています(2)。

  • (1) 光触媒抗ウイルス加工製品の新型コロナウイルスを用いた評価による試験機関の紹介について
    https://www.nite.go.jp/nbrc/information/osiraseverificationbody.html
  • (2) 報告書の利用に当たっての留意事項について
    https://www.nite.go.jp/data/000120691.pdf


  • (2021/12/03)

    可視光光触媒を利用した小型飛沫除去装置ひかりクリーナーについて

    上記のように既に様々な学術的論文によるエビデンスの積み上げが行われており、 様々な感染症への光触媒の有効性が検証されています。
    この光触媒を活用して「飛沫除去装置」というこれまで存在しなかった考え方(ジャンル)の製品を開発しています。 飛沫除去性能、光触媒性能について検証した論文も査読を通り、今月中に公開されます。 100%確実に感染症を制御可能な手段など世界中のどこにも存在しないことを前提として、 あくまでも研究開発品の実使用試験(βテスト)と言う位置づけで、 所属先の大阪府立大学とは一切関係なく、秋吉個人による製品提供という形で、 一般への提供を行います。

    飛沫除去装置 ひかりクリーナー 製品紹介
    (別ページで開きます)

     

    詳細については supackey@gmail.com までご連絡願います


    参考資料

  • 神奈川県立産業技術総合研究所(KISTEC) 光触媒について
    https://www.kistec.jp/r_and_d/project_res/photocatalyst_index/
    光触媒開発者の藤嶋 昭先生が館長を務められている 光触媒ミュージアム が併設されており、光触媒利用の聖地と言って良いでしょう。
    各種 JIS 対応試験など、非常に広範囲の試験が実施可能です。
    https://www.kistec.jp/sup_prod_devp/test_and_mes/koudo/0103_hikarisyokubai/0103_hikarisyokubai_index/

  • これまで困難だった光触媒での抗ウイルス効果の実証に成功 (NEDO)
    https://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_100154.html

  • 光触媒の新たな性能評価法に関する国際標準が発行されました(経済産業省)
    https://www.meti.go.jp/press/2018/04/20180402002/20180402002.html

  • 金属銅、銀粉と光触媒及びNafion(フッ素系イオン交換樹脂)と組み合わせると驚異的な機能アップ(株式会社 ケミカル・テクノロジー、堺市の会社です)
    http://www.chemical-tech.net/photocatalyst.html

  • ミヤネ屋でも紹介しました、サンスターの QAIS-air-01 は、 UV-C と二酸化チタン系の光触媒メッシュ TMiP ユニットを組み合わせた、 ハイブリッドの空気清浄機です。
    https://www.sunstarqais.com/products/air01.html

  • シャープからも可視光応答型の光触媒が発売されました。 詳細については記載されていませんが、「波長約480nmまでの可視光にも反応」とのことです。
    https://jp.sharp/business/photocatalyst/

     

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    小型飛沫除去装置 ひかりクリーナー

     

    ひかりクリーナーの紹介は別ページに移動しました。

    飛沫除去装置 ひかりクリーナー 製品紹介
    (別ページで開きます)

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    加熱

    ウイルスの不活化を最も簡単に行う方法として、 単純に加熱する、と言う手があります。 特に脂質の膜を保つエンベロープウイルスは熱に弱く、 インフルエンザの場合で 100℃ 5分、80℃10分、56℃30分などと言う指標が出ています。 普通のドライヤーの温風を測ってみたら80℃前後でした。 10分はちょっとしんどいですが、息による湿気を飛ばす意味でも、 紫外線を当てた後にだめ押しで加熱するのは効果的だと思います。
    キューピーの報告では、鳥インフルエンザウイルスは55℃ 2分間で、 または 60℃ ではその温度に達するとすぐに不活化する、と言うデータがあります。

  • 鳥インフルエンザウイルスは60℃加熱で不活化しマヨネーズの中では30分以内に不活化
    https://www.kewpie.com/newsrelease/archive/2006/2006_047.html

    60℃ 1時間という「ウイルスを不活性化させるための標準的な方法」 では新型コロナウイルスは完全には不活化されず、 92℃ 15分間で完全に不活化した、と言うデータもありますが、 何分で不活化されるのかなどは良く分かりません。 abstract を読む限りは 10-6 まで下げる話なので、 やや長めになっているかも知れません。 安全をとって100℃ 15分程度を目安にすると良いかと思います。

  • 新型コロナウイルス新型コロナウイルスが死滅する温度が判明
    https://jp.sputniknews.com/covid-19/202004177372961/

    身近な物で、100℃程度で数分間加熱できる物、と言う事で検討しましたが、 有りました。
    オーブンです。 オーブンの予熱モードであれば、100℃前後でキープしてくれます。 (オーブントースターでも、機種によっては100℃程度に設定できると思います)
    マスクをそのままで加熱するのは、食品を取り扱う機器ですからためらわれるのと、 熱を均一に伝えるという意味から、アルミホイルで包んで、
    ホイル焼き にすると良いと思います。
    こちらの研究室にあるレンジでは、以下の様に非常に丁度良い温度でキープしてくれました。 15分程度加熱すると、問題無く不活化されるはずです。
    それぞれのご家庭の機種で試す際は、熱電対付きの温度計がアマゾンなどでとても安価で買えますので(デジタル温度計、熱電対、で検索すればたくさん出ます)、確認してみてから使う様にして下さい。

    (写真にマウスカーソルを当てると、説明文が出ます)

     

    高校までの同級生からの報告では、「鍋で煮る」と言うダイナミックな方法も報告されています。 乾かせば普通に使えたそうです。 100℃でウイルスは不活化され、煮沸消毒していますから普通に洗うだけと異なり乾かす際に雑菌は湧きにくく、以外と合理的かも知れません。 鍋は、料理用とは分けた方が良いと思いますが・・・

    色々と情報を提供して頂いた読者の椿様から、 「ジップロックのような袋、できればジッパーが二重のものにマスクをいれて空気を抜いて 普通に熱湯で煮るのはどうなんでしょう?」 と言う提案を頂きました。 夏場は汗による水分が飛ぶ分、ホイル焼きの方が快適かと思いますが、 不活化という意味では十分実用的だと思います。 温度を測らなくても良いですし、何かの間違いで温度が上がりすぎることもないですし。

    (2020/05/19 追記)
    マスクリーンのところでも紹介した本学の高橋 和先生によると、 濡らしてしまうと繊維が凝集してしまい、極端に捕集性能が落ちる、とのことです。 飛沫をまき散らさない、と言う目的程度には使えるでしょうが、 洗濯、煮沸は避けた方が無難です。 その一方で、ドライヤーでの加熱ではほとんど性能が変わらなかった、とのことです。

  • 大阪府立大学 電子物理 高橋 和 研究室
    http://www2.pe.osakafu-u.ac.jp/pe9/

    いずれにしても、加熱のしすぎにはくれぐれも注意して下さい。 ドライヤーなどで加熱する場合に 油断すると一瞬で使い捨てマスクの生地が融けます。


    本業の、核融合炉材料の熱拡散率測定でお世話になっている NETZSCH Japan さんが、 本気の装置を使って温度変化による挙動を測定した例がこちら。

  • マスクを電鍋で洗浄してみた!その@ 耐熱温度は何度?
    https://www.netzsch.co.jp/application/20200413/
  • マスクを電鍋で洗浄してみた!そのA 電鍋でマスクを加熱してみた
    https://www.netzsch.co.jp/application/20200417/
  • マスクを電鍋で洗浄してみた!そのB 電鍋の温度を調べてみた
    https://www.netzsch.co.jp/application/20200422/
  • マスクを電鍋で洗浄してみた!そのC マスクって何度くらいで縮むの?
    https://www.netzsch.co.jp/application/20200512/?mt=niGhABwMAA4

  • 遠赤外線熱風加熱によるウイルス不活化試験
    加瀬 哲男ほか、日環感, 7 (1992) 39-42. https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsei1986/7/2/7_2_39/_pdf/-char/ja
    によると、エンベロープ無しのアデノウイルスは 200℃5分の処理でも細胞毒性を示したのに対し、 エンベロープを持つヘルペスウイルスは、100℃5分の処理で感染価は検出限界以下になった、とのことです。

    なお、くれぐれも、ドライヤーにマスクを乗っけたまま放置して加熱などしないで下さい。 火事になります。

    (2021/03/03)

    久しぶりに「加熱」に関するトピックです。

    もうそろそろ春になりますがまだまだ寒い日も続きます。 寒くなると換気をするのが難しくなり、どうしても「密閉」環境になりがちです。 光触媒や紫外線を用いた空気清浄機も良いのですが、最も手軽に導入できる対策として、 石油やガスのファンヒーター、ストーブが効果的と思われます。

  • 石油ファンヒーターによる浮遊ウイルス除去効果の確認(ダイニチ工業株式会社)
    https://www.dainichi-net.co.jp/company/news/32962/
  • 石油ファンヒーターがウイルスを除去するのは本当か|なぜウイルスを除去するのかに迫る!(個人ブログ) https://yublog-life.com/kaden/fanheater-virus/

    北里環境科学センターにおいて、日本電機工業会規格 JEM1467「浮遊ウイルスに対する除去性能評価試験」 準拠で試験していますので、インフルエンザウイルスだと思います。 直接新型コロナウイルスに対しての試験ではありませんが、 エンベロープという脂質の膜で覆われており熱に弱いという構造は非常に良く似ていますので、 ほぼ同等の効果が得られるかと思います。 定期的に強制的に換気をせざるを得ない、と言う点もポイントです。


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    その他(突然変異、二酸化塩素)

     

    突然変異

    基本的な放射線生物学の知識が必要です。

    インフルエンザウイルスなどの 1本鎖RNA ウイルスは、一般的に突然変異しやすいと言われています。 通常の細胞は二本鎖の DNA を持ち、様々な化学的損傷に対して修復する酵素を持っています。 放射線などによって切断されてしまった場合でも、 二本鎖であることから片方を鋳型として修復が出来ますし、 二本鎖切断の場合ですらほとんどの場合で修復が可能です。 ところがウイルスは自分自身では修復の酵素などを持たず、 他の細胞内で修復されるとしても一本鎖では修復が困難です
    (簡単な化学的修飾程度は修復できるようです)。
    https://www.jstage.jst.go.jp/article/kagakutoseibutsu1962/41/5/41_5_318/_article/-char/ja/

    天然痘など二重鎖DNAを持つウイルスも存在しますが、こちらは損傷の修復が可能であるため 遺伝的に安定で、変異しにくいためワクチンが有効です。 突然変異は化学物質、活性酸素、放射線など様々な要因で起こりますが、 これによって様々なタイプが生まれて環境に対応していき、 ワクチンなども効きにくくなります。

    ここまで読めば分かると思いますが、インフルエンザも一本鎖RNAウイルスです。 様々なタイプがあり、異なるタイプだと予防接種が効かないのはご存じの通りです。 今回のコロナも同様で、様々なタイプが存在しており、 ごく普通の風邪の原因だったりします。

    一本鎖RNAウイルスにも2種類あり、自分が直接タンパク生成の鋳型となるか、 一旦転写してから鋳型として複製するかの違いがあります。 前者が一本鎖+RNA, 後者が一本鎖-RNAで、コロナは前者、インフルエンザは後者です。

    インフルエンザに効く薬がどのような過程を阻害するかによって、 今回のコロナウイルスにも効くかどうかが変わってくるだろうと思います。 (抗ウイルス薬なら何でも効くわけではないということです)

    (2020/03/25修正) 「コロナウイルスはRNAウイルスでは例外的に変異を起こしにくい。コロナウイルスは校正機能を有する酵素を持つので,変異が起きても,それを除去して正しく遺伝子を複製する」とのことです。 おそらく、上で挙げているメチル化など簡単な化学的修飾を除去する酵素だとは思いますが・・・ 下記のサイトは、湿度に関する考察も興味深いです。
    新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のウイルス学的特徴と感染様式の考察(白木公康)
    https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=14278

     

    二酸化塩素

    インフルエンザウイルスに効果ある物なら使えると思って良いのですが、 二酸化塩素は消毒薬としては我が国に於いては未認可であり、 二酸化塩素ガス自体の毒性(塩素系の呼吸器への刺激)があるため、使用には注意が必要です。 次亜塩素酸ナトリウムの2.5倍の酸化作用があり、効果自体はあるようですが、 製品によっては二酸化塩素の放出が少ない物があるようです。
    濃すぎても薄すぎてもダメなので、そのあたりのコントロールが難しい、と言えます。 効果があるかどうかについては塩素臭である程度判断できると思いますので、 ウイルスの危険性と塩素の刺激とどちらを取るか、という感じでしょうか。

  • 大幸薬品 二酸化塩素実験データライブラリー
    https://www.seirogan.co.jp/medical/data/
  • 二酸化塩素による除菌をうたった商品 −部屋等で使う据置タイプについて−
    http://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20101111_1.pdf
  • Q&A 二酸化塩素による除菌等をうたった製品の使用について
    https://www.gakkohoken.jp/column/archives/74

    二酸化塩素自体の有効性は、以下のソースで確認する事が出来ます。
    「ウイルスなどに反応したときのみ最小限の二酸化塩素を生成するため、刺激や塩素臭などがなく、安全性が高いのが特徴。反応すべき菌やウイルスが存在しないときは無刺激、無毒で口にしても問題ない」と言うのが特徴で、上述の問題点を上手く解決しているようです。 空間除菌、と言う形では無くなりますが。

  • 航空機でも使用の除菌消臭剤が新型コロナに有効 大阪大研究グループ確認 https://www.sankei.com/west/news/200508/wst2005080013-n1.html

    とりあえず私が買ったこの商品は、全く塩素の臭いがしないので、効果は無いと思われます。 認可されていないため雑貨として売られており、濃度なども規制が無く、 このような粗悪商品も野放しのようです。 メーカーに二酸化塩素の放出濃度について照会をしていますが、返答有りません。
    https://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=258&from=voice&id=6010864

    2020/08/28 の話ですが、消費者庁から景品表示法違反で販売元の東亜産業は措置命令出されていますね。 さすがに悪質すぎます。

  • 株式会社東亜産業に対する景品表示法に基づく措置命令について
    https://www.caa.go.jp/notice/assets/representation_200828_1.pdf

     

    参考

  • 日本ウイルス学会
    http://jsv.umin.jp/news/news200210.html

  • 国立保健医療科学院のリンク集
    https://h-crisis.niph.go.jp/?p=132576

  • 第二種感染症指定医療機関の指定状況
    https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou15/02-02-01.html

  • ウイルス粒子の構造と各部の機能
    http://www.med.akita-u.ac.jp/~doubutu/kansensho/virus17/kouzou.html

  • インフルエンザ _ 感染と予防
    https://pro.saraya.com/kansen-yobo/bacteria-virus/influenza.html
    アルコール手指消毒剤のインフルエンザウイルスに対する不活化効果が示されている

  • 対象微生物による消毒薬の選択
    http://www.yoshida-pharm.com/2012/text04_05_02/

  • 新型インフルエンザ知識と予防
    http://sp.nichigi.or.jp/kensyu_saiji/new-influ.html

  • インフルエンザとノロウイルス消毒用エタノールに効果があるのはどっち?
    https://www.fcg-r.co.jp/micro/micro16.html

  • 「次亜塩素酸水」活用広がる 消毒液不足、コロナへの有効性検証
    https://www.sankei.com/economy/news/200509/ecn2005090008-n1.html

  • NITEが行う新型コロナウイルスに対する消毒方法の有効性評価について〜よくあるお問い合わせ(令和2年6月4日版)〜
    https://www.nite.go.jp/information/osirasefaq20200430.html

  • くしゃみはどこまで届くか、は前提条件で変わってくる
    https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00138/051800547/?n_cid=nbpnxt_mled_dm

  • 1分間話すとウイルス含む飛沫が千個発生、8分間以上浮遊 米研究
    https://news.livedoor.com/article/detail/18362508/

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    メディアでの取扱い

  • フジテレビ 「Live News it」4/27 放送分(紫外線)
  • TBSテレビ「あさチャン!」5/18 放送分(紫外線)
  • TBSテレビ「Nスタ」5/18 放送分(紫外線)
  • NHK「ニュースシブ5時」5/18 放送分(紫外線)
  • MBS 毎日放送「ミント!」5/29 放送分(紫外線)
  • TBSテレビ「あさチャン!」6/1 放送分(紫外線)
  • 読売テレビ放送「情報ライブ ミヤネ屋」6/2 放送分(紫外線)
  • 産経新聞(6/3 朝刊第2社会面掲載分)(紫外線)
  • 関西テレビ「報道ランナー」6/4 放送分 (紫外線)
  • 日本経済新聞 6/10 掲載分 (紫外線)
  • 日刊工業新聞 6/11 掲載分 (紫外線)
  • 株式会社いちばん社「健康365(さんろくご)」7月発売号掲載予定、
    ウェブメディア 365 college 掲載済(全体)
  • スポーツ報知 2020年6月23日 社会面(ひかりクリーナーユーザー)
  • 日経電子版 06/23 16:00 映像(ひかりクリーナーユーザー)
  • 産経新聞 8/23 朝刊 23面(社会面特集記事)(ひかりクリーナー)
  • 岐阜新聞 8/29(ウェブ版確認できず)(フォトンクリーナー)
  • 中日新聞 9/1(ウェブ版確認できず)(フォトンクリーナー)
  • 日刊工業新聞 9/4 (フォトンクリーナー)
  • 月刊オプトロニクス, Vol. 465, p122-126, 2020年9月号
    コロナウイルスへの工学的対抗策とは? − 感染症の予防に繋がる製品開発に向けて
  • 岐阜新聞 2020年11月4日 掲載分(フォトンクリーナー)

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    社会貢献

     

    大阪府立大学の方針として、一時中止していた製品の無償提供ですが、

    感染症患者受入の医療機関へのマスクリーン、ひかりクリーナー無償提供を再開致します。

    既に紫外線については査読を通った論文が多数公開されており、不活化の効果が確認されており、 光触媒についても公的な認証機関による信頼できるデータと、学術的な論文により不活化の効果が確認されています。 我々のグループもひかりクリーナーの飛沫除去に関する論文の投稿と査読対応が完了しており、現在2回目の査読中です。

    ただし、実験室レベルで不活化させるミクロな効果が確認されることと、 実際の社会全体の中で感染症を抑制するマクロな効果があることとは、また別の話です。 大阪国際感染症研究センターにおいて我々のグループは、このマクロな感染制御についての検証を始めようとしています。 具体的には、小型飛沫除去装置「ひかりクリーナー」を病院や学校の教室など、 部屋としての規格が揃っている環境で使用していただき、 使用していない一般の対照群との間で統計的に有意な感染者数の差が検出できるか、 というものです。

    もちろんこれには様々な倫理上の問題があるため慎重に手続きを進める必要があり、 感染者情報の取得や提供先の仲介など行政との密接な連携が必要となってきます。 また、ひかりクリーナーの真価は人と人の間に設置して飛沫を除去することにあり、 設置場所に注意を払う必要があります。 また、統計的な処理が必要となるなど、非常に大規模なプロジェクトとなります。

    様々な関係者の協力が必要であり、何卒よろしくお願い致します。

     

    研究推進のための寄付のお願い

    現在ひかりクリーナーを使用して、マクロな感染症制御が可能かどうかの真の意味での「実証実験」を 進めようとしていますが、必要な資金が調達できていません。 このため、大学の研究費支援として寄付を募集しております。

    寄付の目的は研究推進であり、製品提供ではありません。 感染症対策のための研究推進のため、何卒ご協力願います。 なお、秋吉個人として寄付頂いた方へのお礼はさせて頂きます。

    昨年度は「放射線教育振興プロジェクト」に対するふるさと納税による寄付を受け付けていましたが、 本年度は大阪国際感染症研究センターの組織としてつばさ基金のプロジェクトを作ることを検討しています。 受け入れ可能になった時点で、改めて紹介させていただきます。

    それまでは、ふるさと納税ではなく、大阪府大に対する直接寄付という形で受け付けます。 ふるさと納税ほどではありませんが、 確定申告を行えばふるさと納税の上限枠とは関係なく所得税、住民税が控除されます(大阪市/堺市在住の場合、4割程度の控除となります)。 法人、団体の方は、法人税法37条第3項第2号により、全額を損金算入することができます。

    申込書はこちら → 様式第1号寄附申出書
    上記のファイルに記入頂き、akiyoshi[at]riast.osakafu-u.ac.jp ([at] を @ に変換) までご連絡願います。追って、大学側から振込用紙を郵送させて頂きます。

    直接寄付による控除に関しては、以下のサイトを参照願います。

    なお、上記サイト中程にある「WEBお申し込みフォームはこちら」から寄付を行うと、 つばさ基金経由での寄付となり、目的とするプロジェクトに入金できない上に 学内的な事務手続きが煩雑になるため、上に示した「様式第1号寄附申出書」の提出をお願い致します


     

    個人の方などへのひかりクリーナーの提供については、 こちらをご覧ください。

     

    企業様などとの共同研究、受託研究なども、受入を再開致しました。 講演依頼なども受け付けております。
    akiyoshi[at]riast.osakafu-u.ac.jp ([at] を @ に書き換えて下さい) まで、依頼内容を簡潔にまとめて頂いた上でご連絡願います。
    ただし、業務に支障が出ますので、代表番号などへの 電話連絡は何卒ご遠慮願います

    以下に、皆様から頂いた寄付金により、これまで無償提供を行った 医療機関の一覧を掲載致します。

     

    (2020/05/01)
    大阪府 診療放射線技師会様に、マスクリーン 4、ひかりクリーナー を各10台ずつ、 と可視光応答タングステン系光触媒 500ml サンプルを寄贈しました。 初の医療機関への提供となります。

    これまでに製品の無償提供を行った医療機関

    (2020/07/29 現在)

  • 【大阪】大阪府 診療放射線技師会
    マスクリーン 4、ひかりクリーナー を各10台

  • 医療法人 仁誠会 奈良セントラル病院
    マスクリーン 4 1台

  • 健康医学協会附属 東都クリニック
    マスクリーンS 1台、ひかりクリーナー 2台

  • 医仁会武田総合病院 放射線科
    ひかりクリーナー 3台

  • 慶応義塾大学病院
    マスクリーン 4, マスクリーン S, ひかりクリーナー 各10台

  • 【大阪】大阪市立大学医学部附属病院
    マスクリーン 4, マスクリーン S 各10台

  • 【大阪】大阪府立病院機構 大阪はびきの医療センター
    マスクリーン 4, マスクリーン S, ひかりクリーナー 各10台

  • 【大阪】国立病院機構 近畿中央呼吸器センター
    ひかりクリーナー 12台

  • 【大阪】地方独立行政法人 りんくう総合医療センター
    ひかりクリーナー 18台

  • 【大阪】国家公務員共済組合連合会 大手前病院
    マスクリーン 4, マスクリーン S, ひかりクリーナー 各5台

  • 【大阪】社会福祉法人恩賜財団済生会 大阪府済生会中津病院
    マスクリーン 4, マスクリーン S, ひかりクリーナー 各5台

  • 【大阪】日本赤十字社 高槻赤十字病院
    マスクリーン 4, マスクリーン S, ひかりクリーナー 各5台

  • 【大阪】医療法人徳洲会 野崎徳洲会病院
    ひかりクリーナー 15台

  • 熊本大学病院 災害医療教育研究センター(熊本豪雨対応)
    マスクリーン 4, マスクリーン S, ひかりクリーナー 各5台、殺菌灯 10本

  • 県立広島病院 呼吸器内科
    マスクリーン 4, マスクリーン S 各4台, ひかりクリーナー 8台

  • 【大阪】内科・小児科・呼吸器内科クリニック やまどり医院(発熱外来)
    マスクリーン S, ひかりクリーナー, 殺菌灯 各2台

  • 国立病院機構 大分医療センター
    マスクリーン 4, マスクリーン S, ひかりクリーナー, 殺菌灯 各4台

  • 医療法人財団 順和会 山王病院
    マスクリーン 4, マスクリーン S, ひかりクリーナー 各1台

    医療機関以外も含めた無償提供
    合計 ひかりクリーナー 144台、マスクリーン S 70台、マスクリーン 4 76台


    2020/06/12 中津病院への製品引き渡しを行いました。大変喜んでいただけ、今後の活動の力となりました。


    2020/06/23 高槻赤十字病院からお礼状を頂きました。ご丁寧にありがとうございました。


    2020/08/17 大阪府済生会中津病院から感謝状お礼状を頂きました(送り状はこちら)。ご丁寧にありがとうございました。

     


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    問い合わせ e-mail: akiyoshi-masafumi [at] omu.ac.jp
    もしくは supackey [at] yahoo.co.jp
    ( [at] を@に置き換えて下さい)

    電話でのお問い合わせは業務に大きな支障が出ますので、 くれぐれもお控え頂ける様お願い致します。


    研究紹介ページ