大阪府立大学 研究推進機構 放射線研究センター

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Last update 2019/04/16

 

   

 

クルックス管プロジェクトのご紹介

教員向けリーフレット (2019/11/14 版) PDF

第2期実態調査御協力の御願い.doc

教育現場での実態調査 調査希望票

2019_第二弾クルックス管実態調査プロトコル


「教育現場などにおける低エネルギーX線を対象とした放射線安全管理体制の確立」

現在使用されている学習指導要領では中学二年生の電気と電流の単元において、 クルックス管の観察について記載されており、 理科の教科書5社全てでクルックス管に関する記述が掲載されています。 そのためクルックス管の実演を行う先生方が増えています。

さらに、平成29年3月に公布された中学校学習指導要領の改訂に伴い、 「電流とその利用」単元の静電気と電流に関する内容の取扱に於いて 「真空放電と関連付けながら放射線の性質と利用にも触れること」 と言う内容が新しく追加されており、 クルックス管の更なる活用が求められています。

ところが古い製品の一部にはエネルギーは低いのですが、 非常に高い強度の(15cmでHp(0.07) = 200mSv/hにも達する)X線を放出する 製品が存在します。 クルックス管からX線が漏洩していることは、19世紀にレントゲンが発見を行っており、 それにより第一回のノーベル賞を受賞するなど極めて良く知られている事実ですが、 現場の多くの教員の間ではそのことと自分たちが使っているクルックス管からX線が 出ていると言うことが繋がっていません。 日本国内でも 20年以上も前から複数の教育者、研究者が報告を行っていますが、 あまり広く知られないままとなっています。

クルックス管から漏洩するX線はエネルギーが20keV程度と非常に低く、 透過率が低い放射線という観点からの評価が必要です。 正確な線量測定を行ったうえで、使用するハードウェア、運用上の条件などにより 安心してクルックス管を用いた放射線教育を行うためのガイドラインを策定するために、 以下の4つのタスクについて研究を実施しています。

Task1

20keV以下の低エネルギーのX線は一般的なサーベイメーターでは実効線量を評価する事が 困難ですので、信頼できる測定方法での線量評価を行いました。 現在は電圧、電流などのパラメーターとの相関を評価しており、 さらに学校教育現場でも実施可能な安全確認のための測定手法を開発しています。 これらの測定・評価を行うための研究を Task1 として位置づけます。

Task2

使用する装置や印加電圧などの運用条件によって、ガラス管外部へ漏洩するX線量が極めて 大きく変動します。 実際の教育現場での実態を調査し、様々なコンテンツ毎に必要な印加電圧の検証、 安全に使用するための遮蔽体の検証などの、 運用方法の検討を行う研究を Task2 として位置づけます。

Task3

低エネルギーX線はβ線とγ線の中間程度の性質を持ち、不均一被曝をもたらしますので、 このエネルギー領域の放射線による実効線量評価を行う必要があります。 目の水晶体に対する等価線量評価も重要です。 実態調査結果を踏まえた上で教育現場での被曝線量の参考レベルを 様々な諸外国の規制状況を参考とした検討を、 日本保健物理学会の専門研究会の一つである、 「教育現場における低エネルギーX線を対象とした放射線安全管理に関する専門研究会」 において2019年度〜行っています。2020年度までの活動を行った後に、
    (a) クルックス管運用マニュアル
    (b) 低エネルギーX線測定方法
    (c) 低エネルギーX線に対する防護量評価手順
    (d) 管理目標値
    ・それぞれの項目に対する解説
    ・Q & A
などをパッケージにした、 「教育現場における放射線安全管理ガイドライン」 を、 日本保健物理学会の放射線防護標準化委員会 において標準化しようという計画になっいます。 これらの内容を、Task3 として位置づけます。

Task4

ガイドラインの策定により安全が確保出来た上で、 低エネルギーX線を活用した教育コンテンツの開発を行い、 ガイドラインを反映した線量測定手段と新規コンテンツを教育現場に提供します。 これにより、実際の現場からの意見を取り入れ、ガイドラインにフィードバックします。 これらの内容を Task4 として事業実施する予定です。

本プロジェクトは最終的には放射線教育プログラムの普及まで見据えたプロジェクトであり、 オールジャパンでの体制を必要としています。 関心のある研究者・教育者の参加を強く希望致します。

  • 暫定版ガイドライン
  • 今現在も教材として使われているクルックス管からの被ばくを、 これまでに分かった知見の範囲で無理なく低減するために、 以下の暫定ガイドラインを提唱致します。 この暫定ガイドライン下でどの程度まで線量を抑えることが出来るかの実証は 2019年度に実施予定であり、現時点ではこれを守れば絶対に安全と言うことを 保証する物ではありませんが、線量を下げるための指針となる物です。

    (クリックすると、 学校教員向けのリーフレットが開きます)

    参考文献

    • 低エネルギーγ線源の放射線防護,
      松井 佳子,
      Radioisotopes, 24 (1975) 65-70.

    • 学校教育における放電管の使用状況と放射線管理のあり方,
      田原隆志、新見克彦、草間朋子、吉澤康雄,
      物理教育, 35 (1987) 150-153.

    • クルックス管から漏洩するX線の実態とその対策,
      大森 儀カ,
      神奈川県立教育センター研究集録, 13 (1994) 21-24.

    • 学校教育における被ばく,
      大森儀郎,
      第22回放医研環境セミナー「生活と放射線」,NIRS-M-105 (1995) 107-112.

    • 高校物理の中の放射線教育,
      竹中功,
      物理教育, 44 (1996) 278-281.

    • 学校におけるエックス線装置を使用した実験等について,
      文部科学省初等中等教育局教育課程課長・文部科学省スポーツ・青少年局学校健康教育課長通知,
      14初教課第三号, 2002.

    • 電離放射線障害防止規則におけるX線装置にかかる届出義務の簡素化,
      厚生労働省 全国規模での規制改革要望に対する見解の確認, 2003,
      http://www8.cao.go.jp/kisei/siryo/030919/09-2.pdf

    • イメージングプレートを用いたクルックス管からの漏洩線量分布測定,
      藤淵 俊王、井上創、小原哲、加藤英幸、 小林育夫、細田正洋,
      放射線安全管理学会誌, 10 (2011) 40-45.

    • エックス線発生装置管理のための低線量評価法,
      大久保徹、府川和弘、野村貴美,
      日本放射線安全管理学会誌, 15 (2016) 66-73.

    • 教育現場における冷陰極管の漏洩X線について,
      宇藤茂憲,
      福岡教育大学紀要, 66 (2017) 第3分冊, 1-11.

    • クルックス管からの低エネルギーX線評価手法の開発,
      秋吉 優史, 谷口 良一, 松浦 寛人, 宮丸 広幸, Do Duy Khiem, 神野 郁夫, 濱口拓, 野村 貴美, 谷口 和史, 小林 育夫, 川島 紀子, 佐藤 深, 森山 正樹, 宮川 俊晴,
      放射線化学, 106 (2018) 31-38.

    • クルックス管の安全な取り扱いとその課題.
      秋吉 優史,
      放射線教育フォーラムニュースレター, No.71 (2018) 10-11.

    • Investigation of Low-energy X-ray Radiated from the Crookes Tube Used in Radiological Education,
      DO Duy Khiem, Hirokazu ANDO, Hiroto MATSUURA, Masafumi AKIYOSHI Radiation safety management, 18 (2019) 9-15.

     

    学会発表等成果公開

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